2012/06/06

中堅事務所でもBIMイノベーション 久慈設計の取り組み

同社がBIMで基本設計する都内の公共施設
 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)への取り組みは、大手の設計事務所やゼネコンだけでなく、中堅・中小設計事務所にまで広がり始めている。「5年、10年後を考えた場合、いまからBIMに取り組まなければ確実に乗り遅れる」と危機感を募らせる久慈設計の久慈竜也社長は、ことし3月、東京支社にBIM推進室を立ち上げた。

 BIMの導入は自社の利益だけでなく「地方が生き残る道」という。公共建築を建てる際、経験が少ない市町村の担当者は、2次元の図面をみても建物がイメージしにくく、設計の過程で手戻りが多く発生する。「基本設計から3次元で提示できれば、発注者がイメージしやすく、積算のコスト管理もきちんとできる」とメリットを強調する。
 芝浦工業大でBIMを研究していた梅澤佑介氏をBIM推進室に招き、基盤づくりから始めた。「まず、モデリングでパースをつくって社内でイメージを共有している」と梅澤氏。2月に受託し、基本設計中の都内公共施設では、2次元の図面を3次元モデル化している。
 まだ構築段階であり、すぐに本格運用というわけにはいかないが、社内からは「リアルで分かりやすい」という声が上がり、手応えを感じているところだ。今後も、適した案件があれば積極的に3次元化を進めるとともに、テンプレートやパーツの作成など、BIM推進のためのベースづくりに取り組む。
 梅澤氏は「3次元CADに慣れ親しんでいない社員にどう伝えていくかを考えている。3次元化のプロセスを見せながら個々の抵抗感をなくし、理解を深めたい」と足元の課題から着実に解消していく。
 3次元モデルは「発注者に対するサービスの一つとして提案する。期待されていることにきちんと応え、信頼性を高めたい」(久慈社長)と、業務に活用する考えだ。
 推進室は早い段階で5人程度の体制を整える。その上で、5年をめどにBIMを軌道に乗せる計画だ。久慈社長は「いまのところは経営面では負荷になっているが、教育を含めて人材への投資だと思っている。質向上のためのサービスと考えている」と先を見据える。
 多くの中堅・中小規模の設計事務所にとって、BIMへの敷居はまだ高い。「公的機関で研究会を立ち上げてもらえると、われわれのような規模の事務所でもBIMにかかわりやすくなる」(久慈社長)と、業界を挙げたBIM普及運動の広がりに期待する。

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