2015/04/18

【前田建設】1年で問い合わせ100件! 注目集める「スパイラルアンカー工法」とは?

前田建設が開発した既設RC構造物の補強技術「スパイラルアンカー工法」が、地方自治体や建設コンサルタントなどの高い関心を集めている。あと施工せん断補強工法の1つで、建設技術審査証明の取得後1年間で約100件もの問い合わせが寄せられた。インフラ維持補修ニーズの顕在化を裏付けるかのような話だが、この技術がなぜ高い関心を集めているのか。公共工事で初適用となった現場を取材し、その理由を探った。
 この現場は、東京都下水道局が発注した「勝島ポンプ所ほか1か所吐口整備工事」(東京都品川区)。水再生センターへの汚水送水、雨水放流などを担う勝島ポンプ所と鮫洲ポンプ所の改修工事だ。同工法は勝島ポンプ所のうち、放流渠の管体補強と操作台の補強に使われている。特に管体補強の場合、内空側からの増厚工法では内空断面が減少してしまうため、せん断補強工法に軍配が上がる。この現場では、箱形管体の内側から上下・両側面の4方向に施工している。

施工断面
スパイラルアンカーの施工は、既存躯体を削孔して内面を目粗し処理した後、グラウト注入を経て補強鉄筋を挿入・固定するという流れだ。実はこの工法、「あと施工せん断補強では後発の技術。しかし後発だからこそ、さまざまな点を改良している強みがある」(土木技術部の清水英樹技術開発グループ長)。

目粗しビット
削孔には打撃系ドリルではなく、ダイヤモンドコアドリルを採用し、騒音や振動、粉塵の発生を抑えている。「削孔時でも良好な作業環境を保てる上、騒音苦情の心配もない。コアドリルが小型で持ち運べるのも大きなメリットだ」(勝島水門作業所の増田昌昭所長)。削孔内面を凹凸加工して付着強度を高める目粗し処理の作業は、ドリル先端を目粗しビットに交換するだけで済む。

鉄筋の両端にはTPナットの改良版を利用
現場加工も可能なテーパーネジ
補強鉄筋の両端には、特殊なナットを装着して定着性を高める。これはフックの代わりにテーパーネジを使う機械式定着「TPナット」という自社の既存技術を改良したもので、削孔径の抑制や既設鉄筋との干渉を避けるため、可能な限り小径化した。現場でのネジ加工にも対応している。
 一方、スパイラルアンカー工法の“お家芸”とも言えるのが真上方向や横方向への施工だ。液ダレしない特殊な可塑性グラウトが、真上方向への先行注入を可能にした。この現場のように、管体内空側からの施工では特に強みを発揮する。

横方向の施工
特殊な機材・技能が不要、低コストで高品質、加えて施工性も高いという後発技術ならではの優位性が、建設コンサルや自治体から高い関心を集めているのかもしれない。「下水道関連施設での技術的な問い合わせや資料請求が多い」(技術研究所の山本和範主任研究員)という。
 勝島・鮫洲ポンプ所は、前田建設が古くから施工に携わってきた施設だ。その施設に自社の最新技術を初適用してリニューアルする。しかも今回の工事は、両ポンプ所で最後の大型土木工事とも言われている。それだけに、「特別な思い入れがある」(増田所長)。
 現場では安全確保のため、雨が1滴でも降れば作業は中止。さらに現場の目と鼻の先をモノレールが速度を保ったまま通過する。さまざまな意味で、緊張感から開放されない現場でもある。工期はことし12月18日まで。
 増田所長は「無事に工事を進め、皆さんの生活に役立つ良い施設を完成させたい」と力を込める。
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