2015/05/06

【本】設計者にとっての最大の魅力がそこに 『病院建築スペシャリストへの道』

「病院設計は難しい」といわれる。医師、看護師、検査技師、放射線技師、事務職といった多様な立場のスタッフの作業内容を把握し、高度な水準にある医療機器や建築・設備の設計技術の取得が要求される。こういった困難な設計要件にどう応えるべきなのか、本書は、病院の成り立ちや日本における医療文化の特徴といった側面から病院設計で求められる「考えかた」を山下設計の病院建築プロジェクトチームが手掛けた具体的な事例とともに紹介する。

 その過程で明らかになるのは、複雑なルールや決まりごとで縛られたかに見える病院建築もまた、他の建築と大きな違いはないという事実だ。どんな建築にも解決すべき建築的な課題があり、ユーザーへの理解や合意形成、高度な技術力が求められる。このため、「病院建築を知ることは建築計画そのものを知ることである。それは建築の設計者にとって最大の魅力のはずである」と本書は断言する。
 日本における病院の耐震化率は6割程度と言われる。今後、高齢化がさらに進むことを考慮すれば、病院建設・改修の需要は増えることがあっても減ることはない。そうした状況の中で、病院のスペシャリストとしてどうあるべきか。過去の先達の取り組みを知ることは、社会に起こる多様な変化を反映させた「これからの病院建築」を設計するための大きなヒントとなるはずだ。(建築技術・3000円+税)
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