2014/09/28

【現場最前線】営業線、新幹線基礎、民家が隣接する緊張の現場 品鶴線大崎駅構内住吉こ道橋

首都圏では、踏切の解消や交通円滑化を目的とした立体交差事業が数多く進んでいる。鉄建・ジェイアール東海建設JVが東京都品川区で施工中の「品鶴線大崎駅構内住吉こ道橋他新設工事」もその1つ。東京都の都市計画道路補助第26号線整備事業の一環として営業線直下に道路を通すと同時に歩道橋を整備する事業だ。交通円滑化といった整備効果に加え、火災時の延焼を防止する空間としての効果も期待されているが、施工条件は厳しい。営業線との近接施工に加え、新幹線の橋脚基礎も至近に迫っている。さらに目と鼻の先には民家があり、現場は常に緊張感に包まれている。

 この工事は、東京都建設局が事業主体となり、東日本旅客鉄道(JR東日本)東京工事事務所が発注した。立体交差工事で130件以上の実績がある「HEP&JES工法」を採用し、横須賀線の線路直下に非開削で箱形のトンネルを構築する。
 JR東日本と鉄建が共同開発した同工法は、複数の鋼製エレメントをつなぎ合わせることで、さまざまな形のトンネルを非開削で構築できる。エレメントは発進立坑からの推進ではなく、到達立坑からPC鋼線でけん引掘進することで精度を高める。地上部への影響が少ないことから立体交差事業に最適な工法だ。

21の鋼製エレメントをつなぎ合わせる
この現場では、計21のエレメントで矩形トンネルを構築する計画。上床側からエレメントをけん引し、内部にコンクリートを充填していく。側壁、下床も同様に作業を進め、すべてのエレメントを箱形につなぎ合わせた後、内部を掘削してトンネルを貫通させるという流れだ。
 エレメントのけん引掘進では、軌道変位測定器や監視カメラなどを駆使して、営業線へのわずかな影響も見逃さないよう細心の注意を払っている。一方、東海道新幹線の橋脚基礎が至近に迫っているため、「工事による影響を与えないよう、シートパイルで土留めを行ってから施工に臨んだ」(同JVの星光紀所長)。

営業線や新幹線橋脚が至近に
営業線に加えて民家も近接しているため、「バックホウを動かす際も、通常よりゆっくりと静かに作業するよう心掛けている」など、騒音や振動を極力抑えるよう配慮している。星所長には「地域の皆さんの協力があってこその現場」との思いがある。透明の仮囲いを多用しているのも、地域とのコミュニケーションの一環。あえて現場の内部を見せることで「作業員に一定の緊張感を持ってもらう。現場内の整理整頓を常に行うようになる」という効果も期待できる。
 地下水対策では「エコリチャージ工法(循環型地下水制御工法)」を採用し、揚水した地下水を別の場所から地盤に注水して戻している。余剰水が発生しないほか、井戸枯れや地下水枯渇などの周辺環境悪化を防ぐことができる。
 「安全で安心な現場であること」をスローガンに掲げる星所長。「事故を起こすことなく、最後までやり遂げる。(交通円滑化に向けた)地域の皆さんの期待は大きい。その期待にきちんと応えていきたい」と意気込む。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 【現場最前線】900tの巨大桁!! たった25分で首都の大動脈跨ぐ 首都高の横環北線 クリックで拡大 首都高速道路会社は26日未明、建設を進めている横浜環状北線の新生麦出入口付近で、JR6線を跨ぐ高架橋桁の一括架設を行った。施工は鹿島・前田建設工業・京急建設JVが担当。重量900tもの桁を、約25分という短時間で送り出し、無事に架設を完了した。横須賀線、東海道線、京浜東北線という首都圏の大動脈直上を、長さ61mのスパンでまたいだ。工事関係者が静かに見守る中、桁は音もなく滑り出して、向かい側の橋脚に接続された。 ◇秒速2.5メ… Read More
  • 【現場最前線】ゲリラ豪雨と闘う! 東京都の白子川地下調節池工事 近年、ゲリラ豪雨という言葉をよく耳にするようになった。1時間に100mmを超す局地的集中豪雨や、それに伴う都市型水害への対応は、急速な発展を遂げた成熟都市・東京の大きな行政課題になっている。地域の治水安全度を高める護岸整備など、河川改修もさることながら、要所で整備が進む地下調節池などの土木構造物は東京に欠かすことができない重要なインフラだ。いま、東京の地下では、大規模な洪水対策用のシールドトンネルが掘り進められている。   … Read More
  • 【げんば最前線】砂杭8277本! 石巻の北上川河口部堤防復旧工事 巨大津波の襲来により甚大な被害を受けた宮城県石巻市の北上川河口部。水田が広がっていた長面地区は一面海と化し、多くの尊い生命と財産が一瞬にして奪われた。河川管理施設の被害も大きく、堤防が流出・決壊したほか、護岸や樋門・樋管などが被災した。震災発生から間もなく2年半を迎える中、河川堤防の復旧が急ピッチで進められている。右岸側最河口部の工区を担当している熊谷組の現場を訪ねた。   被害が大きかった河口付近 ◇堤防被害は200カ所以… Read More
  • 【現場最前線】掘削土は海上輸送 東京・江東区で昭和大学新豊洲病院 マンションやオフィスなどの開発ラッシュが続く東京都江東区の南部地域で、「(仮称)昭和大学新豊洲病院建設工事」(正式名称・昭和大学江東豊洲病院)が大成建設の施工で進められている。2011年2月の契約後に東日本大震災が発生し、労務不足や資機材の確保に悩まされながらも、構造の変更や施工の合理化、作業員の努力で難局を乗り越えた。運河に隣接する立地を生かした掘削土の海上輸送を始めとする近隣対策を徹底するほか、地元協議会の祭りに模擬店を出すなど“地域との… Read More
  • 【現場最前線】最後の架設作業完了 首都高八重洲線北行き架替工事 多軸台車 首都高速道路会社は8日未明、東京都港区の汐先橋交差点付近で進めている八重洲線(北行き)架替工事で、長さ約25m、重さ約115tの高架橋を多軸台車で運搬し、吊上設備を使って一括架設した。警備を含め約200人が作業に当たった。 桁の架設直前 桁の架設が完了した 同交差点地下には東京都の都市計画道路環状2号線事業のトンネル区間があり、八重洲線橋脚の基礎構造がトンネル建設の支障となることから、首都高は都から工事を受託して橋… Read More

0 コメント :

コメントを投稿