2014/09/09

【現場最前線】宿舎無く余震を警戒する被災地で着工 気仙沼終末処理場復旧

東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた宮城県気仙沼市。気仙沼湾と大川に挟まれた同市川口町に位置する気仙沼終末処理場は最大20mの津波に襲われ、建物が被災し、機能が停止した。その災害復旧工事に飛島建設は当初から携わり、その1、その2工事を単独で受注、引き渡し後、現在は、その3、その4工事を地元の茂木建設とのJVで進めている。写真は躯体工事に入る新管理棟。

 この気仙沼市気仙沼終末処理場災害復旧建設工事(発注=日本下水道事業団)のうち、その1、その2は2013年3月に着工し、14年3月に引き渡しが終了。既存建物の改修と津波対策工事で、機械のメンテナンス時に使用する開口部以外を鉄筋コンクリートでふさぎ、開口部には防水扉を設置した。防水扉の重量は1台約1-3tと大小あり、20台を取り付けた。

本宮義孝統括所長
飛島建設東北支店気仙沼処理場災害復旧作業所の本宮義孝統括所長は「最も苦労したのが宿泊所の確保」と当時を振り返る。同市街地の多くが被災し宿泊所がなく、敷地内に作業員宿舎を建てることもできなかったため、「現場から車で約1時間の岩手県一関市千厩町に宿舎を確保し、協力会社の作業員は仙台市や、一部は気仙沼湾内の大島に借りた宿泊所から通った」。現在は仮設宿泊所ができたため、「状況は良くなってきている」という。

防水扉
また、工事はがれきの撤去から着手し、震災で地盤が沈下したため、大潮時に現場が冠水するなど被災地ならではの苦労もあった。余震などで避難勧告が発令される時もあり、「一般的な安全管理に加え、地震・津波対策にも万全を期した」。特に地下通路で作業中の場合、電気が不通でスピーカが使えず、地下で携帯電話も通じないため、拡声器で誘導するなどの避難訓練を行った。  インフラも機能しない厳しい状況下での着工にもかかわらず、「地元の協力会社の支援調整を早期に行い、土木部と協働して工期厳守、安全第一で施工を進めた」ことなどが評価され、その1、その2工事では、同社の13年度社長賞に輝いた。
 現在施工を進めている、その3、その4の進捗率は合わせて約40%(8月21日現在)。その3は、被災した炭化炉棟の復旧工事と管理棟の新築工事、その4は外構復旧工事とゲートポンプ室の新築工事で、炭化炉棟の復旧は約95%完了した。新管理棟は基礎の掘削が終わり、躯体工事が始まる段階だが、「気仙沼地域では、今秋から復旧・復興事業の本格化に伴う躯体工事が最盛期を迎えるため、生コンクリートの確保を危惧(きぐ)している」と明かす。
 工期はことし9月末まで。本宮統括所長は「作業員が何でも言えるような雰囲気づくりを心掛けながら、工期厳守と無事故・無災害竣工を目指す」と気を引き締める。
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