2014/09/14

【現場最前線】夜6時間の戦い 工夫積み重ねて挑む東京外環・高州高架橋(鋼上部工)工事

2017年度の開通を目指して工事が進んでいる東京外かく環状道路東側区間。現在、三郷南ICから千葉県市川市の東関東自動車道高谷までの延長15.5㎞全線で工事が最盛期を迎えている。東日本高速道路関東支社さいたま工事事務所が担当する区間は三郷南IC~江戸川左岸の3.5㎞、今回取材した高州高架橋約2㎞は国道上に橋梁架設を行う狭小作業ヤードでの施工や国道の交通規制を伴う夜間架設など過酷な条件に挑んでいる。

 高州高架橋(鋼上部工)工事(埼玉県三郷市~東京都葛飾区)は、北と南の2工区に分かれており、北工事843.5mをIHIインフラシステム・川田工業JV、南工事1139mを東京鐵骨橋梁・片山ストラテックJVが担当している。すべて上下部一体型鋼・コンクリート複合ラーメン構造の高架橋でクレーン架設工法を採用している。現在、南工区では横梁架設、北工区では橋桁架設が鋭意進んでいる。

◆交通規制を伴う夜間作業
 今回の工事は、国道の規制を伴う工事がほとんどで、その国道の交通量も非常に多いことから、作業の中心は夜間となる。「時間は午後9時から午前5時までの8時間。まさに時間との戦いです」(上田功東日本高速道路関東支社さいたま工事事務所所長)。

鷹野5東交差点の箱桁架設状況
下新田公民館入口交差点の架設状況
作業に入る前に、国道の規制材設置撤去や信号など作業の支障となる設備の一時的な移設や方向転換などに時間を費やすことから実質的な作業時間は6時間程度となる。そこで考えられたのが、柱頭部架設時における「段違いロケット型ガイドカバー(鉄筋に取り付けることで先端部を細くでき、柱頭部ブロックと鉄筋との干渉を低減)」や橋桁架設時における「一夜ベント」「セッティングビーム」の採用だ。橋桁架設の際には、「一時的に橋桁を支持することができるため、ボルト添接が完了しなくてもクレーン解体をすることができ、作業時間を短縮することができます」(藤野和雄同高州工事長)。

200トン吊りクレーン2台を使って作業が進められている
また、狭小ヤードであるにもかかわらず「複数の大型クレーンとそれに見合った作業員の班体制で一気に架設を行うため、綿密な施工計画と時間管理が必要となります」(杉山久晴IHI・川田JV所長)。こうした苦労の中で、夜間規制日数も削減している。

◆騒音対策にも万全期す

 夜間工事の際に発生するクレーンやボルト締め付け時などの音は、遠くにいても聞こえるため騒音対策には細心の注意を払う。もともと国道沿いに高さ5mの遮音板が設置されてはいる。しかし、遮音板のない交差点部には「可動式防音パネル壁」を設置し、音が近隣の住宅や病院に極力漏れないように万全の対策を行っている。また、高層マンションへのクレーンなどによる低周波領域の騒音対策として「逆位相発信式アクティブ消音装置(逆位相の音波で音を打ち消す)」を設置し、10dB程度騒音を削減するなど効果を上げている。

◆幅8mの狭小作業ヤード

 国道298号の必要車線幅を確保すると、常設作業ヤードは幅8m程度(仮設防護柵があるため実質7m)しかない。すぐ横には一般車両が行き交うことから、ヤード外に吊り荷などが侵入することは許されない。そこで登場したのが、レーザーバリアシステムだ。現在、箱桁の組み立て作業を作業ヤード内で行っているが「レーザーバリア管理線に何かが触れると危険を知らせてくれるため、作業も安心して進められます」(飯塚誠東京鐵骨橋梁・片山ストラテックJV所長)。

◆工事情報を地域に発信/近隣住民とともに歩む道路づくり

鷹野文化センターの一角に設けられた外環コーナー
救急車や消防車などの緊急車両、市民の足となるバスについてはクレーンなどの重機配置を検討し、通行止め時にも規制内を通し市民生活に影響しないようにしているという。また、住民に外環の開通効果や工事に伴う規制情報などを周知するため、三郷市立鷹野文化センターのロビーの一角に外環のコーナーを設置した。「地域住民への情報発信の場として役立てています。橋梁の構造や架設の模型にも関心を示してくれています」(藤野工事長)。実際、夜間工事にもかかわらず多くの住民が施工現場を見学しにくるという。

左から上田所長、杉山所長、藤野工事長、飯塚所長
開通まで約3年。今後、北工区に続いて南工区でも橋桁架設が進められる。「以前、関東支社に在籍していたとき、外環の橋梁設計にも携わっていたので、直接工事にも携われて感慨深い」(藤野工事長)と熱く胸の内を語る。
 3環状の一翼を担う外環・東関東自動車道~関越自動車道がつながることによる整備効果は非常に大きいことから、開通が待たれる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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