2014/09/03

【本】丹念な取材で浮かび上がる建設業の役割 『地域とともに生きる建設業』

地域の発展、活性化にとって建設業が果たしている役割、存在は大きい。経済の発展や雇用の下支えだけでなく、日常のイベントや災害時の復旧・救助活動など、地域社会を下支えする産業としての側面も持っている。
 一方で、これまで公共投資に依存する産業というイメージが強く、大手ゼネコンから零細企業まで一体で論じられることが多いことから、「地域を支えている産業という視点から建設業を体系的に分析されることは少なかった」と筆者は指摘する。

 北海道釧路市で長く過ごした筆者から見た身近な建設業と、メディアで伝えられイメージされている建設業の姿の乖離(かいり)があまりにも大きく「地域産業としての建設業の実態の姿と役割の大きさを伝えていきたい」という思いが執筆の契機の1つになった。
 本書は、地域の立場から改めて建設業とは何かという問題意識で、幅広い角度から地域産業としての建設業の姿を追った。昨年夏から北海道内の各地を回り、建設業者29人の話を丹念に聞くとともに、現場での活動を見て回り、地域をめぐる課題や可能性についても触れながら、建設業が果たす役割などを考察した。建設業が地域とともに生きている産業であることを実感させてくれる。
 (中西出版・1500円+税)
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