2014/09/15

【カワイイ建築】ムホー氏設計の巣鴨信金がカワイイ!「幸福」つくり出す建物

建築においても、「カワイイはつくれる」のか--「カワイイ(Kawaii)」が世界共通の言葉として認知されつつある現代において、その価値観を建築にも本格的に導入しようとする動きが活発化している。重く堅い建築でも軽く柔らかな建築でもない「カワイイ」建築の今を追った。写真は巣鴨信用金庫中青木支店「24色のメロディ」(Ryogo Utatsu)。

◆ムホー氏の「かわいい信金」が最優秀賞受賞

 日本感性工学会(高寺政行会長)が主催する「かわいい感性デザイン賞」で、ことしはフランス人建築家のエマニュエル・ムホー氏が設計した巣鴨信用金庫(東京都豊島区)の「かわいい信金シリーズ」が最優秀賞を受賞した。プロダクトデザインや商品パッケージへの表彰が多い同賞においては異例の授賞だった。

常盤台支店「24色のリーフ」(Daisuke ShimaNagasa&Partners)
江古田支店「レインボーシャワー」(Daisuke ShimaNagasa&Partners)
同賞の審査委員長を務めた大倉典子芝浦工大教授は「外見だけでなく、内装や働く人が生み出す内部の心地よさが素晴らしい」と受賞理由を説明し、「このデザインを生み出す勇気を評価したい」と語る。その上で「カワイイとは日本独自の素晴らしい価値なのに、企業でその価値を訴えても受け入れられない現状がある。今回の表彰を契機として企業の意識を改革したい」と力を込める。

新座支店「24色のスクエア」(Hidehiko Nagaishi)
志村支店「虹のミルフィーユ」(Daisuke ShimaNagasa&Partners)
「かわいい信金シリーズ」は、ムホー氏が老朽化により建て替える複数の支店の設計を担当した一連の取り組み。開口部を広く取って開放感を生み出したほか、ロビーをパブリックスペースとして位置付けることで近隣住民との接点を増やし、信用金庫のイメージを変えたデザインとして高い評価を受けた。
 表彰状を受け取った伊藤芳之創合企画部長は「デザインだけでなく、居心地の良さを重視することで住民へのホスピタリティーを強化し、地域のランドマークになった」と喜びを語った。

◆「カワイイ」研究、建築学会も開始

 日本建築学会でも「カワイイ」建築を見直そうとする動きがある。6月には『「可愛い」を求める心と空間のあり方に関する研究ワーキンググループ』が設置され、「カワイイ」と建築の関係についての研究も始まった。
 主査を務める宇治川正人氏(実践女子大大学院非常勤講師)は「『カワイイ』という価値は、日常的に触れるものの中にあって人の幸福をつくり出す大きな力がある」と指摘する。
 その上で「建築の『カワイイ』には物体としての可愛さだけでない。『かわいい建築』を追求するのではなく、『かわいい』を求めている人に建築がどんな対応をすべきかを考えたい」と強調する。
 海外から高い評価を受ける一方で、社会から十分にその価値が認められたとはいえない「カワイイ」という価値観。
 ワーキンググループとしての取り組みは始まったばかりだが、宇治川主査は「パンドラの箱のように多様な要素のある分野」と手応えを感じており、「建築と社会の役に立つ可愛さを考えていきたい」と力を込めた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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