営業、仕事の手配、総務関係、さらに一人のコンクリート圧送技能士として現場にも出る山富士(神奈川県藤沢市)の和田千恵理社長。さらに母として主婦業もこなす。「あそこに任せれば安心だと言われる良い仕事をしたい」というのが信念の和田社長。自身の経験から建設産業への女性の進出については「女性でもできる職種と女性には無理な職種がある」と指摘する。自らの体験や実践を通して見た建設業への女性進出の課題等について聞いた。
家業がコンクリート圧送業だったことから「20歳のころ、見習いに出された」のが、建設業に携わるきっかけ。「現場の足場の階段を長さ3mの重いものを担いで下さないといけない。先輩から『勝手に来ておいて“女”なんて言うな』と言われもした。適所でない、女性には合わないところに来たのだと思った。同等にやってもらわないと足手まといになるだけ。だけど、男性と体力は同等でない。それを求められても無理だから、半人前でもいいと思ってもらわなければ」と話す。
当時はバブルのころで、女性が現場に出ることが多くなってきていた。鉄筋工や監督、設計にも女性が多くいた。「求められていたのではなく、やる気のある女性が男性社員についてやっていたが、同等にできないからいなくなったのだ」と思う。そして、バブルが崩壊し、高齢者や女性が切られていったという。
そうした実態を見てきただけに昨今、「女性の活用」が言われるようになったことに、最初は「人手不足になって、困れば女性なの」という感じを受けたというのも「何かあると女だからと言われ、頑張っているというよりも生意気ととらえられる。男女平等とは言っても、平等ではないことが多い」ことを経験してきたからだろう。1986年に男女雇用機会均等法が施行されて30年近くになるが、建設現場における女性の就労環境は整備されていない。男性側の意識改革と女性用の更衣室やトイレなどの労働環境の整備を先にしなければならないという指摘だ。
◆現場は2人体制、過酷な肉体労働
コンクリート圧送の仕事に限って言えば、「女の人はまず無理だ」という。その理由として「昔は3人体制だった。オペレーターが1人いて、現場作業を2人でやっていた。それが今では、オペレーター側に人がいなくなり、ラジコンで作業員が動かせるようになって、2人で行う。女性はオペレーターにはなれるが、作業員になることは難しい。建設業の職種の中でも、肉体労働としては何本かの指に入ると思う」と体力的に女性には厳しい仕事だ。
さらに、「建設現場では10時、昼、3時と休憩があるが、コンクリートの打設中は休憩できない。生コンが来れば昼食もとれないし、早出もある。2人しかいないから1人を置いて休憩を取るのは難しい。機械のメンテナンスもしなければならないし、一人前になるには年数もかかる」ということもある。
「女性の体力では無理で、男性と対等にやれる人はいないと思う。見方を変えて、細やかな気配りや清潔感など女性の特性を生かした、女性の体力でもできるところに配置すれば女性が生きるのではないか」と指摘する。また、「当時は女性用トイレもあったが、今はほとんどない」と、設備など就業環境の整備の必要性も指摘する。
結婚して子育てのため、一時仕事を離れていたが、事務を手伝うために戻った。その後、会社が2次下請けの部分の仕事をやめて、すべて自社営業にしたことから仕事が少なくなり、職人の生活を守るために、自ら営業に歩いた。バリケードのあるところへ営業に行った。入口でガードマンに弁当売りと間違えられて追い返されたり、現場では所長にも会ってもらえなかった。それでも来るなと言われなければ足を運んだという。「名刺を受け取ってもらえるようになると、すぐにファクスで単価表を送った。電話帳でコンクリートに関係するところに電話して、まず会うことから始めた。話を聞いてくれれば、とっかかりができる。紹介で広がり、つながってきた。レールのないところに、レールを敷くのは大変だった。しかも女だし」と振り返る。
コンクリート圧送施工技能検定1級の資格を取得したのも、そうした営業活動からだ。「資格がなければ一人前に見られないぞと、ある所長に言われて取得した」という。
◆納得してサイン、全員が保険加入
社内では女性ならではの視点からいろいろな取り組みをしている。「社会保険に加入させるのにも苦労した」と振り返る。職人からは「将来のことを考えていたら、こんな仕事をしていない」と言われた。個人にかかわることは分かりやすく書いて、分かったらサインさせるようにしているという。社会保険の問題も、加入していないと仕事ができなくなるなどの加入の必要性を説明するとともに書面にし、回覧させ、読んで理解したらサインをさせるようにした。「サインしたからには知らない」とは言えないから、天引きされても不平不満は出ない。こうした取り組みもあって、全員が社会保険に納得して加入したという。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
家業がコンクリート圧送業だったことから「20歳のころ、見習いに出された」のが、建設業に携わるきっかけ。「現場の足場の階段を長さ3mの重いものを担いで下さないといけない。先輩から『勝手に来ておいて“女”なんて言うな』と言われもした。適所でない、女性には合わないところに来たのだと思った。同等にやってもらわないと足手まといになるだけ。だけど、男性と体力は同等でない。それを求められても無理だから、半人前でもいいと思ってもらわなければ」と話す。
当時はバブルのころで、女性が現場に出ることが多くなってきていた。鉄筋工や監督、設計にも女性が多くいた。「求められていたのではなく、やる気のある女性が男性社員についてやっていたが、同等にできないからいなくなったのだ」と思う。そして、バブルが崩壊し、高齢者や女性が切られていったという。
そうした実態を見てきただけに昨今、「女性の活用」が言われるようになったことに、最初は「人手不足になって、困れば女性なの」という感じを受けたというのも「何かあると女だからと言われ、頑張っているというよりも生意気ととらえられる。男女平等とは言っても、平等ではないことが多い」ことを経験してきたからだろう。1986年に男女雇用機会均等法が施行されて30年近くになるが、建設現場における女性の就労環境は整備されていない。男性側の意識改革と女性用の更衣室やトイレなどの労働環境の整備を先にしなければならないという指摘だ。
◆現場は2人体制、過酷な肉体労働
コンクリート圧送の仕事に限って言えば、「女の人はまず無理だ」という。その理由として「昔は3人体制だった。オペレーターが1人いて、現場作業を2人でやっていた。それが今では、オペレーター側に人がいなくなり、ラジコンで作業員が動かせるようになって、2人で行う。女性はオペレーターにはなれるが、作業員になることは難しい。建設業の職種の中でも、肉体労働としては何本かの指に入ると思う」と体力的に女性には厳しい仕事だ。
さらに、「建設現場では10時、昼、3時と休憩があるが、コンクリートの打設中は休憩できない。生コンが来れば昼食もとれないし、早出もある。2人しかいないから1人を置いて休憩を取るのは難しい。機械のメンテナンスもしなければならないし、一人前になるには年数もかかる」ということもある。
「女性の体力では無理で、男性と対等にやれる人はいないと思う。見方を変えて、細やかな気配りや清潔感など女性の特性を生かした、女性の体力でもできるところに配置すれば女性が生きるのではないか」と指摘する。また、「当時は女性用トイレもあったが、今はほとんどない」と、設備など就業環境の整備の必要性も指摘する。
結婚して子育てのため、一時仕事を離れていたが、事務を手伝うために戻った。その後、会社が2次下請けの部分の仕事をやめて、すべて自社営業にしたことから仕事が少なくなり、職人の生活を守るために、自ら営業に歩いた。バリケードのあるところへ営業に行った。入口でガードマンに弁当売りと間違えられて追い返されたり、現場では所長にも会ってもらえなかった。それでも来るなと言われなければ足を運んだという。「名刺を受け取ってもらえるようになると、すぐにファクスで単価表を送った。電話帳でコンクリートに関係するところに電話して、まず会うことから始めた。話を聞いてくれれば、とっかかりができる。紹介で広がり、つながってきた。レールのないところに、レールを敷くのは大変だった。しかも女だし」と振り返る。
コンクリート圧送施工技能検定1級の資格を取得したのも、そうした営業活動からだ。「資格がなければ一人前に見られないぞと、ある所長に言われて取得した」という。
◆納得してサイン、全員が保険加入
社内では女性ならではの視点からいろいろな取り組みをしている。「社会保険に加入させるのにも苦労した」と振り返る。職人からは「将来のことを考えていたら、こんな仕事をしていない」と言われた。個人にかかわることは分かりやすく書いて、分かったらサインさせるようにしているという。社会保険の問題も、加入していないと仕事ができなくなるなどの加入の必要性を説明するとともに書面にし、回覧させ、読んで理解したらサインをさせるようにした。「サインしたからには知らない」とは言えないから、天引きされても不平不満は出ない。こうした取り組みもあって、全員が社会保険に納得して加入したという。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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