建設産業のビジネスシーンにクラウドサービスの活用が広がってきた。煩雑な業務を管理するほか、複数に及ぶ関係者の情報共有のツールにも、インターネットを介して膨大なデータを一元管理できるクラウドの優位性が生かされている。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に代表されるように、3次元モデルデータを最大限に利用する手段としてもクラウド環境が重要視されてきた。写真はBIM活用で協業した日本設計とオートデスクの会見。
17日に東京都千代田区の霞が関コモンゲートで開かれたNPO法人ASPIC(ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム)主催のクラウドフォーラム。各分野のクラウド最新事例を見ようと、約240人が来場した。建設・不動産分野がカテゴリーの1つに区分けされた背景には、ビジネスシーンへのクラウド浸透が急速に高まっている現れでもある。発表5社の事例を見ても、その有効性が浮き彫りとなっている。
◆煩雑業務の進捗管理
大成建設では、1日に1万人の作業員が従事する除染業務の統合管理にクラウドをフル活用している。作業当初はエクセルベースの管理を進めてきたが、「業務量の拡大に伴う作業員の増大にも必要なリソースを有効に割り当てられる」(島田裕司社長室情報企画部企画室課長)と、クラウドの導入に手応えを感じている。1人当たり15-20秒で作業員の入退場を許可でき、業務の効率化と品質向上を下支えしている。
現場の統合管理にクラウドを活用した独自サービス「建設サイト」などを展開中の三菱商事は、システムの導入実績を着実に増やしている。サービスには大手ゼネコン5社を始め60社の建設会社が加入し、常時7000-8000現場の情報共有システムとして機能している。従来は元請企業ごとに業務システムを確立していたため、協力会社にとってはそれぞれに対応する必要があった。ITサービス事業企画部の高橋遼平氏は「医療分野などにもシステムを展開できる」と先を見据える。
◆不動産情報の一元管理
Jリートの6、7割に自社のクラウドが活用されているというプロパティデータバンクの牧裕志営業本部営業企画室長は「所有、運用、管理に分かれている投資用不動産ファンド事業では、全体を一括管理できるクラウドサービスの利用効果が大きい」と語る。資産規模、入居率、配当に加え、地震リスクなどの細かい情報を一元管理する手法として注目されている。事業用不動産の管理も同様に「企業の業務システムとの連携を考える際にもクラウド利用が欠かせない」と強調する。
住宅不動産の流通にクラウドサービスを展開するいい生活(東京都港区)は不動産会社1281法人2304店舗と契約を結ぶ。松崎明取締役CTOは「不動産会社の日々の業務をトータルサポートしている」と役割を説明する。国内の年間中古住宅流通件数は約50万件に達し、不動産業界の構成も中小企業で成り立っており、「物件情報をつなぐシステムが求められている」と明かす。
平常時のエコと非常時の事業継続を「ecoBCP」と位置付け、独自のソリューションを展開する清水建設ではエリアマネジメントの手段としてクラウドを活用する。全国に点在する事業所などの施設群をトータル管理することで、より最適な施設の運用を提案する。秋本学ecoBCP事業推進室副室長は「建築のオーナーだけでなく、自治体などのタウンマネジメントもターゲットに展開する」と先を見据えている。
◆BIMのデータ管理
建築プロジェクトの生産現場でもクラウド利用に注目が集まり始めた。3次元モデルデータを設計から施工、維持管理まで一貫して流通させることで、業務の合理化を生むBIMの導入が急速に進む中、よりリアルタイムに膨大なデータを利用する手段として、クラウド環境が欠かせないからだ。
プロジェクトチームがリアルタイムに共同作業できるBIMプラットフォーム「BIMcloud」を展開するグラフィソフトが、大林組、NECと共同でスマートBIMクラウドを構築したのは1年前。複数の大型プロジェクトを同時進行で抱える大手企業ではBIMの導入拡大を背景に、膨大なデータを的確にやり取りするにはクラウド環境が必要不可欠になっている。
今月8日には、クラウドをシステム基盤に置く2つの動きが発表された。1つはオートデスクとパートナーシップを結んだ日本設計。BIMを軸に設計ワークフローの再構築に向け、システム基盤としてオートデスクのクラウドプラットフォーム「360」の活用を決めた。
2つ目は戸建住宅の生産業務を支援するクラウドサービスを発表したLIXILグループのK-engine(東京都新宿区)。工務店やビルダーなど中小建設会社に対し、図面データの3次元化から原価積算や見積もり、工程表の作成までを完全自動化する仕組みを提供し、年100億円の事業規模を見込む。これは、住宅版のBIMクラウドとも言えそうだ。
総務省の通信利用動向調査によると、建設業のクラウドサービス導入状況は3割に達する。この1年間で1割の増加となり、導入率では卸売・小売業やサービス業に肩を並べるまでに急成長。クラウド導入がきっかけとなり、仕事の中身や進め方が大きく変わるとしている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
ASPICセミナーでは建設・不動産が1つのカテゴリーに |
◆煩雑業務の進捗管理
大成建設では、1日に1万人の作業員が従事する除染業務の統合管理にクラウドをフル活用している。作業当初はエクセルベースの管理を進めてきたが、「業務量の拡大に伴う作業員の増大にも必要なリソースを有効に割り当てられる」(島田裕司社長室情報企画部企画室課長)と、クラウドの導入に手応えを感じている。1人当たり15-20秒で作業員の入退場を許可でき、業務の効率化と品質向上を下支えしている。
現場の統合管理にクラウドを活用した独自サービス「建設サイト」などを展開中の三菱商事は、システムの導入実績を着実に増やしている。サービスには大手ゼネコン5社を始め60社の建設会社が加入し、常時7000-8000現場の情報共有システムとして機能している。従来は元請企業ごとに業務システムを確立していたため、協力会社にとってはそれぞれに対応する必要があった。ITサービス事業企画部の高橋遼平氏は「医療分野などにもシステムを展開できる」と先を見据える。
◆不動産情報の一元管理
Jリートの6、7割に自社のクラウドが活用されているというプロパティデータバンクの牧裕志営業本部営業企画室長は「所有、運用、管理に分かれている投資用不動産ファンド事業では、全体を一括管理できるクラウドサービスの利用効果が大きい」と語る。資産規模、入居率、配当に加え、地震リスクなどの細かい情報を一元管理する手法として注目されている。事業用不動産の管理も同様に「企業の業務システムとの連携を考える際にもクラウド利用が欠かせない」と強調する。
住宅不動産の流通にクラウドサービスを展開するいい生活(東京都港区)は不動産会社1281法人2304店舗と契約を結ぶ。松崎明取締役CTOは「不動産会社の日々の業務をトータルサポートしている」と役割を説明する。国内の年間中古住宅流通件数は約50万件に達し、不動産業界の構成も中小企業で成り立っており、「物件情報をつなぐシステムが求められている」と明かす。
平常時のエコと非常時の事業継続を「ecoBCP」と位置付け、独自のソリューションを展開する清水建設ではエリアマネジメントの手段としてクラウドを活用する。全国に点在する事業所などの施設群をトータル管理することで、より最適な施設の運用を提案する。秋本学ecoBCP事業推進室副室長は「建築のオーナーだけでなく、自治体などのタウンマネジメントもターゲットに展開する」と先を見据えている。
◆BIMのデータ管理
建築プロジェクトの生産現場でもクラウド利用に注目が集まり始めた。3次元モデルデータを設計から施工、維持管理まで一貫して流通させることで、業務の合理化を生むBIMの導入が急速に進む中、よりリアルタイムに膨大なデータを利用する手段として、クラウド環境が欠かせないからだ。
プロジェクトチームがリアルタイムに共同作業できるBIMプラットフォーム「BIMcloud」を展開するグラフィソフトが、大林組、NECと共同でスマートBIMクラウドを構築したのは1年前。複数の大型プロジェクトを同時進行で抱える大手企業ではBIMの導入拡大を背景に、膨大なデータを的確にやり取りするにはクラウド環境が必要不可欠になっている。
今月8日には、クラウドをシステム基盤に置く2つの動きが発表された。1つはオートデスクとパートナーシップを結んだ日本設計。BIMを軸に設計ワークフローの再構築に向け、システム基盤としてオートデスクのクラウドプラットフォーム「360」の活用を決めた。
K-engineのサービス概念図 |
総務省の通信利用動向調査によると、建設業のクラウドサービス導入状況は3割に達する。この1年間で1割の増加となり、導入率では卸売・小売業やサービス業に肩を並べるまでに急成長。クラウド導入がきっかけとなり、仕事の中身や進め方が大きく変わるとしている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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