震災から3年半が経過し、インフラ復旧は着実に進む一方、いまだに約3200人の被災者が仮設住宅での生活を余儀なくされている岩手県大船渡市。長期化する仮設住まいを解消し、生活再建を加速させるために何がいま求められているのか。同市大船渡町にある永沢応急仮設住宅を中心に現状を追った(写真は大船渡中学校から見た大船渡港と区画整理が進む大船渡駅周辺)。
岩手県沿岸部南部に位置する大船渡市は、一大漁港・大船渡港を中心に水産業が盛んで、2004年には活気ある港湾を顕彰する日本港湾協会の「ポート・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。この有数の港町を津波が襲い、JR大船渡駅周辺を中心に5563世帯が被災。全壊は2789世帯、大規模半壊も431世帯に上った。
早急に被災者の住まいを確保するため、市内には県が1801戸の仮設住宅を整備。13年12月のピーク時には4531人が入居した。その後、一部完成した災害公営住宅への移転や自力再建によって入居者は減少しているものの、8月末現在で約3200人が仮設住宅での生活を続けている。
その一つである永沢応急仮設住宅は、大船渡港を見下ろせる高台に位置する大船渡中学校の校庭に整備された。総戸数は138戸。供用された時点ではほぼ満室で、現在も8割程度の部屋が埋まっている。
◆3-4割が自力再建を目指す
市内で被災し、この仮設住宅で暮らす54歳の男性は、震災前は両親、息子夫婦、孫の6人で暮らしていたが、現在は男性と両親が永沢、息子家族は他地区の仮設住宅で暮らしている。避難生活が長引く中、「仮設では両親、息子夫婦と孫の6人で一緒に暮らすことはとても出来ない。家族皆で暮らしたい」との思いが募る。
この男性は、自力再建の道を選択。仮設住宅がある大船渡町内に現在、戸建て住宅を建設中で、来春には完成する予定だ。こうしたケースのように、自力再建を望む被災者は少なくない。「この団地でも3-4割の住民は自力再建したいと考えている」という。
一方で、資機材・人手不足を懸念する声も多い。公共工事の場合は発注ロットの拡大など発注方式を見直すことで対応しているが、自力再建を目指す個人の被災者は施工業者を確保できないことが大きな問題となっている。
◆マッチングサポート制度、住宅再建相談会で情報提供
このため、地域の住まいのつくり手である建築士・設計事務所、工務店、専門工事業者、林業・木材産業関係者や建材流通事業者などが連携している岩手県地域型復興住宅推進協議会(事務局・県建築士事務所協会)は、復興住宅マッチングサポート制度を6月から開始。家を建てたい希望者に、円滑に工事が発注できるようにスケジュールの空いている業者を紹介している。
資材や職人不足に直面した際には、地域型復興住宅生産者グループ内で円滑に融通し合えるよう事務局を介して情報を提供している。
県と市では、この制度を被災地で定期的に開催している住宅再建相談会で紹介しているほか、仮設住宅に入居している自力再建希望者らにも資料を配布するなど制度の周知・普及に取り組んでいる。
宅地の確保も大きな課題だ。その一つが、特に津波被害の大きかった大船渡駅周辺土地区画整理事業だ。市が都市再生機構(UR)に委託して進めているもので、JR大船渡線より海側に商業機能を集積、にぎわいの創出を図る。一方、線路より内陸部は5mかさ上げして安全な住宅用地を確保し、中心部での自力再建を促す。
定住の地確保に不可欠な災害公営住宅も、徐々にではあるが確実に進展。県、市、URが整備する26地区、計801戸のうち、7地区、128戸が8月末に完成した。残る673戸も順次建設を進め、16年度中の全体完成を目指している。
さらに、希望者が多い自力再建に向けては、市が約1473万円(税込み)を上限とする補助制度を打ち出しているほか、その受け皿となる防災集団移転促進事業を21地区で実施。15年度中の完了を予定しているなど、多様なメニューで被災者ニーズに応える懸命の努力を続けている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
岩手県沿岸部南部に位置する大船渡市は、一大漁港・大船渡港を中心に水産業が盛んで、2004年には活気ある港湾を顕彰する日本港湾協会の「ポート・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。この有数の港町を津波が襲い、JR大船渡駅周辺を中心に5563世帯が被災。全壊は2789世帯、大規模半壊も431世帯に上った。
早急に被災者の住まいを確保するため、市内には県が1801戸の仮設住宅を整備。13年12月のピーク時には4531人が入居した。その後、一部完成した災害公営住宅への移転や自力再建によって入居者は減少しているものの、8月末現在で約3200人が仮設住宅での生活を続けている。
大船渡町にある永沢応急仮設住宅。右奥は大船渡中学校 |
◆3-4割が自力再建を目指す
市内で被災し、この仮設住宅で暮らす54歳の男性は、震災前は両親、息子夫婦、孫の6人で暮らしていたが、現在は男性と両親が永沢、息子家族は他地区の仮設住宅で暮らしている。避難生活が長引く中、「仮設では両親、息子夫婦と孫の6人で一緒に暮らすことはとても出来ない。家族皆で暮らしたい」との思いが募る。
この男性は、自力再建の道を選択。仮設住宅がある大船渡町内に現在、戸建て住宅を建設中で、来春には完成する予定だ。こうしたケースのように、自力再建を望む被災者は少なくない。「この団地でも3-4割の住民は自力再建したいと考えている」という。
一方で、資機材・人手不足を懸念する声も多い。公共工事の場合は発注ロットの拡大など発注方式を見直すことで対応しているが、自力再建を目指す個人の被災者は施工業者を確保できないことが大きな問題となっている。
◆マッチングサポート制度、住宅再建相談会で情報提供
このため、地域の住まいのつくり手である建築士・設計事務所、工務店、専門工事業者、林業・木材産業関係者や建材流通事業者などが連携している岩手県地域型復興住宅推進協議会(事務局・県建築士事務所協会)は、復興住宅マッチングサポート制度を6月から開始。家を建てたい希望者に、円滑に工事が発注できるようにスケジュールの空いている業者を紹介している。
資材や職人不足に直面した際には、地域型復興住宅生産者グループ内で円滑に融通し合えるよう事務局を介して情報を提供している。
県と市では、この制度を被災地で定期的に開催している住宅再建相談会で紹介しているほか、仮設住宅に入居している自力再建希望者らにも資料を配布するなど制度の周知・普及に取り組んでいる。
宅地の確保も大きな課題だ。その一つが、特に津波被害の大きかった大船渡駅周辺土地区画整理事業だ。市が都市再生機構(UR)に委託して進めているもので、JR大船渡線より海側に商業機能を集積、にぎわいの創出を図る。一方、線路より内陸部は5mかさ上げして安全な住宅用地を確保し、中心部での自力再建を促す。
定住の地確保に不可欠な災害公営住宅も、徐々にではあるが確実に進展。県、市、URが整備する26地区、計801戸のうち、7地区、128戸が8月末に完成した。残る673戸も順次建設を進め、16年度中の全体完成を目指している。
さらに、希望者が多い自力再建に向けては、市が約1473万円(税込み)を上限とする補助制度を打ち出しているほか、その受け皿となる防災集団移転促進事業を21地区で実施。15年度中の完了を予定しているなど、多様なメニューで被災者ニーズに応える懸命の努力を続けている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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