2016/09/30

【現場最前線】「角落とし」で打開! 4ヵ月の工期短縮に挑む富山新港火力発電所LNG1号機新設工事


 北陸電力が1100億円を投じて富山新港火力発電所(富山県射水市)に新設するLNGプラント1号機。主に取水・放水路などのインフラ機能を担う発電工区では、佐藤工業・熊谷組JVが大幅な工期短縮に挑んでいる。稼働中の発電所内作業という制約が多い中、現場は効率的な工程プランを練ってきた。星和博所長は「発電所の定期点検期間を利用するなど、4カ月もの工期短縮にめどを付けた」と明かす。写真は構築中の新LNGプラントに冷却水を循環させる水路

 工事の進捗率は9月末で56%となり、折り返し地点を回った。佐藤JVはLNGプラントの冷却水を循環させる取水路と放水路を築造するほか、電気ケーブルやガス導管などの設備工事も手掛ける。山本二郎所長代理が「どの作業も施工前の試掘が欠かせない」と強調するように、発電所内はケーブル、ガス管、高圧線などの埋設物が数多く存在する。前施工の優位性から、昔の基礎図面をもとに対応しているが、図面と現実が異なり、現場はより慎重な対応を求められている。
 敷地には石炭や石油プラント計4基の既設発電所があり、LNGプラント用の発電所は道を挟んで隣に新設される。現在は既設4プラントに近接する作業路の地下15m地点に循環水管を施工済み。推進工法による掘削距離は約400mとそれほど長くないが、万が一に備えて超高圧ジェットで地中障害物を除去できるDo-Jet工法を導入した。
 到達立て坑内には径2800mmの循環水管が顔を出している。佐藤工業がDo-Jet工法を採用したのは今回が3例目。東京都の下水道工事などで効果を確認しており、満を持しての導入だったが、星所長は「結果的に高圧ジェットを使うことはなかったが、“保険”をかけたことで安心した施工ができた」と振り返る。
 推進管の設置に加え、取水路や放水路の築造も順調に進む中で「現場は常に4カ月の工期短縮に目を向けている」と山本所長代理は強調する。新プラントの供用開始を少しでも早めるには後工程をいかに縮められるかが問われる。当初は取水路工事を一端休止し、プラントに水を引き上げるポンプアップ設備工事を実施する計画だったが、同時並行で作業ができれば大幅な工期短縮が実現できると検討を進めてきた。

到達立て坑から顔を出す径2800ミリ推進管

 星所長は「角落とし(簡易ゲート)のアイデアが状況を打開した」と説明する。新プラントの取水路と放水路はともに既設の水路との連結工事が不可欠。別の企業が担当するポンプ設備工事が完成するまで、水路連結の工事を行うことができないため、あらかじめ接続部付近に簡易ゲートを増設すれば、水路連結とポンプ設備の工事を同時に対応できる。「しかも発電所の点検作業時期を利用し、この工事を済ませてしまえば、工事のために発電所を休止する必要もない」とつけ加える。
 電気ケーブルトレンチやガス導管などの設備工事では、特に慎重な施工を心掛けている。既設埋設物をよけるように設置作業を進めるが、地下1mの位置には図面にない埋設物がみつかることが多い。現場ではこれら一つひとつが何であるかを調べながら対応している。発見した埋設物には小さな孔を開けて確かめる作業になり、これまでに100回以上もの調査を実施してきた。
 工期は2018年11月まで。当初は19年3月の完了を予定していたが、水路の簡易ゲート増設などの工夫により、後工程作業の前倒しにめどが付いた。敷地内ではPCタンクを含む基地工区を大林組JV、桟橋工区を五洋建設JVが施工中。「他の工区と違い派手さはないが、稼働中の発電所内作業が進む部分が、この現場の難しさ。4カ月の工期短縮より、むしろ作業の確実性を重視している。既存ケーブルを1本破損させれば発電所自体を止めてしまい兼ねない」。星所長は常に気を引き締めている。
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