2016/10/02

【現場最前線】地域の資源・イメージ実現する綿密な「気遣い」 高岡駅前東地区複合ビル


 北陸新幹線の富山県内の並行在来線「あいの風とやま鉄道」の、高岡駅周辺地区のにぎわいの核として整備が進められている複合ビルが、年末に向け工事最盛期を迎える。「高岡を肌で感じ、自然に人が集い、市民の皆様に愛される」をデザインコンセプトに掲げ、入居する看護専門学校のイメージを表現した清潔感とともに、白・黒の漆喰(しっくい)をイメージした外装や「さまのこ」と呼ばれる千本格子など高岡古来のデザインと銅・アルミ・ガラスといった地域資源を大胆に活用した外観の彩りと質感が特徴だ。写真は北側外環。近接するホテルの右側が高岡駅

 事業主体は高岡市や地元企業などで構成する高岡駅前東地区複合ビル整備事業推進協議会で、西松建設が100%出資して設立した特別目的会社、高岡駅前東開発が事業施行者となり、補助金申請や等価交換、保留床処分などのほか、設計・工事も発注。設計・監理は三四五建築研究所(富山市)、施工は西松建設・大鉄工業JVが担当している。
 2015年3月に事業施行者が決定、既存施設解体後、16年2月に建築工事に着手した。竣工引き渡しは17年1月の予定だ。建設地は高岡駅北東側の同市下関町の敷地約2700㎡。建物はS造4階建て延べ7825㎡。富山県高岡看護専門学校、高岡市医師会のほか、1階に店舗・業務施設がテナントとして入居する。医師会が2階に入り、専門学校が教室、実習室、多目的ホールなどとして1-4階の延べ約5700㎡を占める。2階レベルで駅と渡り廊下で接続する。
 敷地はW形の不整形地で、南側がJR・あいの風とやま鉄道の営業線と近接し、渡り廊下も一部、線路敷地の上を通る。北西側には営業するホテルも近接し、車両による資機材の搬出入口(作業動線)が東側の1カ所しかない。タイトな工期で、しかも制約が多い敷地条件の下、段取りには一段の工夫と経験が求められた。

JR・あいの風とやま鉄道と近接する南側外観

 西松・大鉄JVの現場代理人、森田正登所長はこれまでの工程管理のポイントについて、「鉄道を始めとした周辺への気遣いが一番」と語る。特に営業線については、「列車通行時の見張り員として3人、安全管理者である元請けから監視員が1人、線路沿いで重機が稼働しているときは終日、着工した2月から建て方を終える7月末まで張り付いていた」という。資材の搬入も、列車の時刻表に合わせて搬入計画を立てた。建て方手順の変更や一部外構工事は前倒しも行った。
 工期短縮では、敷地内にあった既設建物の基礎地中梁を歩道・公共道路の基礎地盤や山留めとして再利用することで約1カ月の短縮を実現した。内装では作業の輻輳(ふくそう)化を避け、フロアごとに異なる協力業者の作業員を配置。外装でも鉄骨が終わったところからすぐ外壁パネルを張り始める段取りで3-4班に分けて施工した。8月末現在で進捗率は33%。入場する作業員は現在100人程度だが、10月からは150-200人態勢となり、11月には概成する見通しだ。
 出隅入隅の多い建物構造にあって、乾式パネル工法の外壁仕上げでは水の流れ方、納まりにも細心の注意を払う。床についても精度を上げるため、1回下地を作っておいて、仕上げ前に再度念を入れて不陸調整をする方針だという。

完成イメージ

 同複合ビル整備事業は、14年3月に高岡市が策定した高岡駅前東地区整備基本構想で、民間活力による主体的開発を打ち出していたことを踏まえて具体化。今回施工に取り入れられた建築への地域資源の活用や工期の短縮手法は、西松建設が事業施行者への応募時に提案し、民間ノウハウとして評価・期待されているものだ。地域のにぎわい創出に向け、開発不動産事業に注力する同社の総合力の一翼を現場で担う森田所長は「駅前の拠点として残っていく施設であり、駅乗降客が通行する動線でもあるので、学生、施設利用者、通行する人が使いやすく安全な建物を無事故で完成させたい」と気を引き締める。待望のオープンは来春だ。
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