暫定的なモデル道路を整備した放射5号 兵庫橋北側の環境施設帯(築堤+歩道) |
◇放射第5号線(杉並区久我山2~3丁目間)/計画段階から住民に見える化
東京都市計画道路放射第5号線(放5)は、区部と多摩地域を結ぶ重要な幹線道路。接続する東八道路(三鷹3・2・2号線)と合わせて、2020年の完成を目指す東京外かく環状道路(関越~東名)へのアクセス道路にもなる。
第三建設事務所は、放5のうち、唯一の未整備区間でボトルネックとなっている杉並区久我山2丁目~同3丁目の約1.3㎞を対象に整備を進めている。
香月高広工事第一課長は、「17年度末の交通開放を目指して事業を進めている。幅員60mのゆったりした道路で中央に玉川上水とその両側に緑地帯と遊歩道、さらに道路(車道)の外側に10mもの環境施設帯を設ける。玉川上水の保全と新たな緑の創出を両立させる環境に配慮した道路になる」と力強く語る。中央を流れる玉川上水の緑、遊歩道の外側に設ける新たな緑地、環境施設帯(築堤)と、両サイドにわたって緑が広がる、公園と道路が一体になった“後世に残る道路"になるという。
また、放5は、緊急時の避難路や物資輸送といった役割に加え、延焼遮断帯としての機能など、防災面の強化も担う。
同路線は、計画策定の段階から情報を公開、都民意見を聞き取りながら、計画を具体化させていく「総合環境アセスメント制度」を試行した都の第1号事業。00年3月に試行手続きを開始、04年5月の都市計画変更では、当初50mだった幅員を総合環境アセスメントの試行結果を踏まえ、玉川上水の保全や地域への環境配慮を盛り込み、幅員60mに変更した。05年12月の事業化まで、まさに地域と協働で計画を醸成させてきた。
09年には兵庫橋付近に車道や歩道、植樹帯(築堤)、遮音壁といった暫定的な「モデル道路」を整備。沿道住民に道路の将来イメージを“見える化"するなど、事業の必要性を理解してもらう工夫も積極的に行っている。
現在、用地買収は8割強まで進捗。昨年、地元に対する工事説明会を実施して、既に下水道管など地下埋設物の敷設工事に着手している。
交通渋滞の解消という経済的側面に加え、豊かな緑を創出する環境面、緊急時の避難路や物資輸送、延焼遮断帯としての防災面など、二重三重の事業効果が見込まれる「放5」。地域にとって、早期の開通が待たれる路線だ。
◇妙正寺川鷺宮調節池/誠実対応が結実、住民理解得る
妙正寺川沿いの都営住宅建て替えで創出した用地を 活用した調節池整備のモデルケース、上部は避難場所になる |
尾上靖工事第二課長(当時)は、「非常に水害リスクが高い地域で、われわれも先輩方も長い歳月をかけて護岸や調節池の整備を進めてきた。とはいえ、護岸の改修には時間とコストがかかる。地域の安全性を早期に高めるため、鷺宮調節池の整備を計画した」と振り返る。
鷺宮調節池は、妙正寺川沿いの都営住宅(鷺の宮アパート)の建て替えによって創出した約1haの用地を活用して整備した。貯留量は約3万5000m3。創出用地を活用した先駆け的な事業である。中小河川における目標整備水準の引き上げで今後、見込まれる公共用地を活用した調節池整備のモデルケースとなるプロジェクトだ。
工事に当たっては、周辺への騒音や振動を考慮して、工事車両の搬入路となる区道を、都が低騒音舗装に打ち換えた。また、当初は残土の搬出に要するダンプの通行台数を1日50台に制限。各交差点にガードマンを配置するなど、地域への安全面の配慮に力を注いだという。
しかし、ダンプ車両の不足など東日本大震災による影響が工事の進捗に影を落とす。「約6万5000m3もの残土を搬出しなければならない中で、取水時期を遅らせないためには、1日50台に制限していたダンプの通行台数を増やす必要があった」(上村文昭妙正寺川事業センター所長)。
地域住民との交渉の末、ダンプの通行台数は1日80台まで増加させることで理解を得た。第三建設事務所のこれまでの地域への丁寧かつ誠実な対応が実を結んだ結果だった。また、残土の搬出先も荒川河川下流事務所と荒川下流の堤防補強工事に工事間流用することで合意。荒川下流の土砂受入地に搬出することで回転数を確保したという。
調節池は4月1日に取水を開始。今夏にも洪水が発生すれば取水できる状況にある。
丸山健一工事第二課設計担当係長は「鷺宮調節池の上部は地元区や地域の要望により多目的広場として利用され、災害時には広域避難場所となる。現在は多目的広場の整備に向けて、地元区から工事施工を受託した都が人工地盤の整備を進めている」と話す。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月19日
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