ネット上の動画サイト「土木チャンネル」の対談「築土構木の思想」2人目は、経済評論家の勝間和代氏が登場する。「愛される土木」をテーマに、藤井聡京大大学院教授が3回にわたって、土木が愛されるためには何が必要かを問い掛ける。勝間氏は発展途上国での道路の必要性、骨格となる幹線道路の多寡で生まれた国内格差について触れるとともに、土木界に対しては「顧客設定があいまい」と指摘。「いかに国民にいい印象も持ってもらうか」が大切だと論じる。前編は16日、中編は22日、後編は29日にアップされる予定だ。
◇途上国の例
前編で語るのは、スーダン、スリランカでの体験を通した道路の重要性。「道路がなければ産業どころではない。政府開発援助(ODA)で病院や学校を建てても、病人が運べない、教師が来られないといった事態になっている。そして何よりまず問題なのは、きれいな水の供給、清潔なトイレであり、そこに道があって、初めて人間の生活基盤が成り立つ」と土木の重要性を語る。
同様に国内問題としては紀伊半島、特に和歌山県の現状に論及し「国道が2本しかない。しかも、その国道も狭くて、橋は相互通行というありさま。これで工業を発展させようとするのには無理がある。北陸3県が裕福なのは道路インフラのおかげ」だと話す。
◇世論は土木に否定的
中編では、土木に対して否定的な世論、国民とのコミュニケーション不足の問題が話題に。勝間氏は、官民が癒着していると国民が見ているのは「土木の仕組みそのものに問題がある。その批判は市民感情としては当然」としつつも「地方のインフラを整備することで産業を興し、ずっと払い続けている地方交付金をなくしていく」という視点の必要性、道路整備で構築される地域間ネットワークの効果によって、さらなる国土のリスク分散ができるという利点を挙げる。さらに「太平洋(ベルト地帯)ネットワーク以外はぜい弱だ」とも指摘する。
◇コミュニケーション不足
後編は、国民から愛される土木のあり方、理解を深めてもらうために土木界がすべきことを語り合う。基本にあるのは、これまでの社会に対するコミュニケーション不足だ。「土木という仕事を何のためにするのかあいまいだったし、しっかりと(国民に対しての)説明責任も果たしてこなかった。また、(大都市に住む)国民の感じ方に迎合するマスコミも問題だ。迎合マスコミとオピニオンリーダーになるメディアに分かれるべき」と切り込む一方で、「土木関係者がメディアにちゃんと説明すべきだ」「土木の才能とコミュニケーションの才能は両立しない。(説明のための)通訳養成が欠けていた」とも。
◇土木も接客業
さらに、話は陳情に及ぶ。「われわれのところに投資してほしい。そうしてくれれば、(産業を発展させて)国にお返しできる」という、国家に対して貢献できるというやり方が望ましいとの考えを提示。ただ同時に「土木界は顧客設定があいまい」だとも指摘する。「いかにいい印象を持ってもらうか」が大事だとし、「例えば、道ばたで弁当を広げ、大声で笑いながら食べるというようなことは住民にとって印象が悪い。生活が乱されることに、どれくらい市民が嫌がっているか(理解していない)。だからこそ、市民に(その仕事が)どんな役に立つかが分かるような説明書を、現場近くに置いておくのも有効ではないか」と提案する。
土木に明るさを取り戻すために「土木ミュージアム」の必要性を提唱、ポジティブな要素を増やすよう求める。「土木が接客業であるという意識は、いままでゼロだった。(意識を変えて)国民みんなの土木になるようにすることが大切」だと結ぶ。
土木チャンネルは、こちら
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建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月16日
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