東日本大震災の発生時、ある鉄道駅で、駅員がメガホンを片手に懸命に避難誘導をしていた。しかし、その言葉は一部の人たちにとって、ただの音声に過ぎなかった。外国人である。「国際都市」東京での一幕だ。
この出来事を知ったエジソンハードウェア(札幌市、辻誠社長)が、約1年半をかけて開発したのが、「MLI(メニー・ランゲージ・インフォメーション)タッチメガホン」などの多言語拡声装置だ。
◇タッチパネルで操作
MLIタッチメガホンは、拡声器に搭載したタッチパネルを操作するだけで、例えば“地震が発生しました。危険ですから、至急、この場所から離れてください"といったコメントを、4カ国語以上で自動的に繰り返し放送できる。
天候や場所を選ばない防滴仕様で、手袋や軍手をはめたまま操作できる独自の抵抗膜式タッチパネルを採用。開発期間の多くは、軽量化とコストダウンにも費やした。
また、三陸沿岸部では、最後まで放送で避難を呼び掛け命を落とした行政職員がいたが、このメガホンは、置いたまま自ら避難しても最大音量で10時間放送し続けられる。
◇車載アンプでもOK
メガホン型のほか、パトロール車の車載アンプに接続可能な「MLIタッチハンディ」や、既存の非常放送設備と接続でき緊急地震速報やJアラート(全国瞬時警報システム)とも連動する「MLIタッチユニット」もそろえた。
収録コメントは、地震・津波などの自然災害、火災などの人的災害、事故障害など多岐にわたり、メガホンとタッチハンディが355種類、タッチユニットが235種類。日英中韓の4カ国語を基本に、特注で約20カ国語に対応する。タッチパネルのアイコンを2、3回タッチしていくことで、流したいコメントを非常時にも簡単に呼び出せる。
今後、国土交通省の地方整備局や地方自治体などの河川・道路管理者を始めとする行政機関、高速道路会社、鉄道・空港などの交通機関、観光・商業施設の管理者などにアピールしていく。外国人労働者が働く建設現場にも適しているという。
◇観光立国に不可欠
近年、街中で多言語のサインやアナウンスが増えているが、災害時まで対応できている施設はそう多くはない。しかも、「日本語を話せる外国人でも、非常時には母国語しか耳に入らないものだ。こうした外国人を放っておくことはできない」と辻社長。
既に観光・在住外国人が1000万人を超え、今後は観光客だけで年間1000万人の観光立国を目指す日本。それだけに地震を始めとするあらゆる自然災害に備え、さまざまな現場に欠かせない逸品となりそうだ。メガホン型の希望小売価格(税別)は26万円。現在、特許出願中。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月31日
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