トンネル貫通の瞬間を1枚に収めた |
◇プロカメラマンが指導
戦後、わが国の復興と成長を牽(けん)引してきた建設産業は、社会・経済情勢の急変や公共事業バッシングなどの影響で事業量がピーク時の半分に激減し、産業そのものが大幅に縮小した。担い手の高齢化も進み、震災復興でもマンパワー不足が深刻化している。
秋葉社長はこうした状況を踏まえ、「このままではいけない」と発起。同社は発注者支援業務を担っており、社員が現場技術員として常駐している。その業態から「市民の理解を得るためにわれわれができることは、現場でやっていることを見てもらうことだ。実際の現場を見てもらうのは難しいが、われわれが写真をとり、市民に見せてはどうか」と思い立ち、昨年7月に開いた社員研修会の講師にプロのカメラマンを迎え、撮影のイロハについて指導を受けた。
『なぜこんなことを?』と、社員から疑問の声も上がったが「ありのままの現場写真は撮れても、一般市民に理解されるような写真は撮れない。市民に訴える力を身につけるためにプロの手法を学んでほしい」と説得した。社員全員にデジタルカメラを配布し、被写体を限定せず自由に撮影させるとともに、各自に写真を提出させ、社内で批評する活動なども続けた。
この間、社員はカメラを持ち歩くことが習慣になり、撮影の腕も上達。中には新聞に風景写真の投稿を始めるなど、すっかりカメラに“ハマった"社員もいるという。
自由な被写体でイメージアップ |
東北地方整備局が主催する現場見学会や水防演習などの行事にも許可を得てスタッフを派遣。被写体に近付いて自然な表情を撮影する技術は玄人はだしで、関係者の評判を呼んでいる。
活動の主なターゲットは子どもや学生などの若年層だ。「技術を伝承していかなければ、いざというときに貢献できない。こういう仕事をしたいという子どもが1人でも増えれば将来につながる」と期待を込める。
撮り溜めた力作の数々は、東北地整が開くパネル展などで共同展示というかたちで公開したい考えだ。「訪れた人の写真を撮って持ち帰ってもらうなど、また来たくなるような企画で市民に寄り添いながら理解を得ていきたい」と展望する。さらに「こうした試みが実現し、国交省に評価されたら、関係各社にも声を掛けて大々的なイベントを開きたい」とアイデアは尽きない。
「かつてのように自信と誇りを持てる産業にしていきたい」との思いから始まった地元企業の小さな挑戦が、いつか大きなムーブメントとなって波及していくことを期待したい。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月24日
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