東京・大手町の経団連会館(Photo by Jo) |
一方、建設業界の側でも、各団体から構成各社に対して、労務費改善や法定福利費の問題について前向きな要請や決議を行っているようだ。
そんな矢先、またまた国交省が動いた。日本経済団体連合会や日本商工会議所など民間の経済団体などに対して、建設産業の担い手確保のために、賃金や法定福利費を適切に見込んだ発注を訴えたのである。
さらにこの動きに呼応する形で、専門工事業団体が同趣旨の要請を経済団体などに直訴したことも報じられている。
建設業に働く作業員の賃金向上や社会保険への加入促進は、間違いなく重要だ。とりわけ民間発注工事において、どれだけ労務費単価の改善がなされるかは、施策の成否のかぎとなるだろう。その意味では理解できる動きだ。
だが一方で要請を受けた経済団体では、どう受け止めたのか、やや気になる。
というのも要請を受けた側の経営者から見れば、法定福利費などは法律を順守した経営を行っているならば、当然にコストに含まれているはずと思うからである。将来の働き手の確保も、まずは当事者が努力すべきことだ。それを所管官庁が協力要請することに、違和感はなかったろうか。
人々が自動車を買う、レストランで食事をする。そんな時に、部品や食材納入業者が法定福利費を払っているかなどは、誰も確認しない。それが社会の常識である。もし筆者が要請を受けた側の立場なら、ここまで役所に面倒を見てもらう業界の当事者能力を疑う。普通の産業界とは異質だとの印象すら抱きかねない。
だが国交省がここまであえて踏み込んだからには、建設業界も腹を据えて呼応するしかない。改善努力に全力を挙げていくことだ。最近の報道では予算不足の自治体工事の入札などで、ゼネコン側が応じない事例も出ているようだ。目先の受注欲しさを脱した断固とした姿勢は堅持してほしい。
国交省の異例の要請の背景にある危機感。建設業界がこれを共有し、当事者として乗り越えることができなければ、経済界や民間発注者からの評価はどうなるか。想像に難くない。
建設業界は長く、「社会的理解の促進」を掲げ、また産業界における地位向上も望んできた。他産業からも納得される成果を生み出すことなくして未来はない。不退転の決意が必要だ。
(新)
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月1日
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