「建設生産の合理化を突き詰めるには、3次元モデルデータを生かし切ることがポイント」と強調するのは、ダッソー・システムズ(東京都港区)の森脇明夫マーケティングディレクター。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及を追い風に、日本の建設業界には3次元CAD『CATiA』を軸に販売展開してきた同社だが、ここに来て営業提案の切り口を方向転換した。
◇プロセスの無駄を排除
同社の打ち出す建設業向けインダストリー・ソリューション・エクスペリエンス(ISE)は「リーン・コンストラクション」。これは生産プロセスに潜む無駄の完全排除を追求する考え方で、1990年代から米国の製造業で普及しているリーン生産方式に基づいている。「大切なのは、生産合理化には設計ツールが重要ではなく、生産システムのインフラ部分をどう構築するか。結果として、そこに使われるCADソフトは他社製品でもよく、当社はオープンシステムとしてプロジェクト全体を管理する枠組みを提供する」(森脇氏)。
米国の建設現場では、既にリーン方式の考え方を取り入れる動きが少なくない。ダラスで進行中の、ある大学病院建設プロジェクトでは、現場事務所に6週間分の工程表が貼り出され、元請企業は協力会社と話し合いながら、無駄のない詳細な工程計画を立案している。ボードには隙間がないほどの付箋が貼られ、現場の状況が変わるたびに新たな工程や注意事項をメモした付箋に取り替えられる。
工程計画や進捗を共有できる |
「実は、この現場のやり方はアナログながらも、関係者と密に情報を共有しながら最適な工程管理を導いている事例だが、これをデジタルでシステム化しようというのが当社が提案するリーン・コンストラクションだ。建設会社ごとに仕事の進め方や現場管理の仕方は異なる。そのインフラ部分をシステム化するということは業務の改善にもつながる」(同)。
リーン・コンストラクションの根幹を形成するのは、同社が提供するプロジェクト管理のコラボレーションツール『ENOVIA』であり、それを軸に3次元CAD『CATiA』、シミュレーションツール『DELMIA』、解析ツール『SIMULIA』などが構成ソフトとして連携する。生産のどの部分を合理化すべきかによって、必要なソフトは変わってくる。初期投資額は企業規模によって異なるが、目安は1000万円程度という。
「設計データを2次元から3次元に移行しても、生産効率を上げたことにはならない。3次元データを効果的に管理できるかによって、生産合理化は実現する。BIM導入を成功に導くには、生産システムのインフラを整えることが前提だ」(同)。同社は大手・準大手ゼネコンへの導入提案を本格的にスタートした。初年度は7、8社への導入を目標に置いている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年7月10日
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