2014/02/18

【安藤忠雄】講演会で「職人の重要性」「社会的地位向上」訴える

安藤忠雄建築研究所は15、16日の両日、安藤氏の代表作の一つである複合リゾート施設「淡路夢舞台」(兵庫県淡路市)で、第13回建築技術研修会を開いた。安藤氏のほか、夢舞台の建設にかかわったゼネコンや設備業、造園業、各種メーカー関係者ら約350人が参加し、施設見学やさまざまなレクチャー、講演会などで旧交を温めた。
 今回のテーマは「日本の建設業界の現状を知り、未来を考える」。講演会やプレセミナーでは業界の人材不足や技術の継承などを題材に取り上げ、問題を提議した。
 安藤氏は講演で「日本の建設技術やスケジュール・品質管理はすばらしい。それなのに、技術者はあまりにも恵まれていない」と職人の待遇について述べ、「昨今の職人不足は、われわれがこれまで職人を大事にしていなかったからだ」と語気を強めた。
 また、夢舞台が建設された経緯を説明し「建物が完成した後も、その建物をこれからどうするのかを考えなければならない」と完成後の作品に愛着を持つことの重要性を説いた。最後に「建設業は、自分たちが重要な仕事をしているんだということを自覚し、技術者の社会的地位を上げなければならない。つくったものを大切に、つくっている間も大切にし、それが社会のストックになるという時代になっていかないと、東京オリンピックは実現しないかもしれない」と警鐘を鳴らし、講演を締めくくった=写真。
 研修会では竹中工務店の木谷宗一氏、清水建設の印藤正裕氏も講演した。
 木谷氏は竹中工務店の創業時から受け継ぐ「棟梁精神=竹中らしさ」を継承する社員育成システムについて説明し、「若年層にはいつも常にポジティブシンキング・ポジティブアクションで、仕事を道楽と捉え、嘘を嫌う体をつくれと話している。もっとも重要なのは人の気持ちを大切にすること。思いやる気持ちを持たなければ成功しない」と話した。
 印藤氏は清水建設のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入状況と今後の展望について解説。「建築の仕事は情報を動かすこと。2次元の図面は人でないと読めないが、3次元情報はコンピューターが読み取れるようになり、可能性が広がった」とメリットを話した。一方で「事前に入力するデータが多くなった。うまく使いこなさないとBIMの良さのすべてを活用することはできず、無駄な労力になってしまう」と注意点を指摘。「BIMは使いこなすことができれば思いどおりのことができる。仕事そのものを変えていくBIMは今後も普及していくだろう」と展望した。
 このほか、研修会に先だって夢舞台の見学会やプレセミナーが開かれたほか、16日午前には夢舞台のますますの緑化を願い、参加者が敷地内の園地に植樹した。
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