スロープでオフィス間の全フロアを徒歩で移動できる |
【執筆者からひとこと:このビルは、設計・施工で担えるゼネコンならではの視点が生かされている。竹中工務店の設計力を示すためにも、学会賞などへの作品応募には、会社として力を入れているという。今回の受賞は、こうした努力が実を結んだのだろう。】
受賞作「明治安田生命新東陽町ビル」は、竹中工務店東京本店から約500mほどの場所にある複合型オフィスビルだ。100m角の広大な執務空間の内部では40m角の吹き抜け空間を中心に、奥行き30mのオフィススペースを高さ1200mmずつずらしたステップフロアとして配置。空調機械室、階段、エレベータなどのサービス機能はオフィスフロアの外周に設けた。
「明治安田生命新東陽町ビル」の全景 |
これに加えて、今回の作品で新たな局面として意識したのが「オフィスで働いている人間にとって心のよりどころとなるような空間の象徴性を生み出すこと」だった。通常、オフィスにおいて「空間の象徴性」が問われることはない。しかし、今回の作品では同心円状に積層するステップフロアと吹き抜けという独特の構造により高低差を設け、オフィスに居ながら全体を俯瞰する視線を生み出した。
菅順二氏(竹中工務店設計部長) |
今回の受賞作品は、これまでに手掛けた「竹中工務店東京本店」(2004年)、「スカパー東京メディアセンター」(08年)、「日東工器本社・研究所」(10年)、「飯野ビルディング」(11年)で展開してきた共通のコンセプト「スペースの全体可視性確保」「自然光・通風の導入」「視環境の変化の演出」の延長にある。
菅氏は、このコンセプトを設定した理由として現代のオフィスビルが「建築」ではなく容積率にあわせた「土地」をつくる営みになってしまっている点を指摘する。
その上で、オフィスがフラット化している時代においては「どれだけ今までに展開したコンセプトや象徴性を実践し、そこで働く人間の記憶に残る建築になっていけるかが重要になる」と見据える。
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