名取処理区で行われた社会実験 |
同システムは、東北建設協会(菅原政一理事長)が2011年度に公募した「建設業に関する技術開発支援テーマ」に応募・選定された今村教授が、堀宗朗東大教授や大保直人NPOリアルタイム地震情報利用協議会専務理事らと共同開発した。
緊急地震速報や津波警報などから得られた情報を利用し、登録された携帯電話やパソコンなどの端末に、メールで避難場所を知らせる。
具体的には、第一報で地震情報を発信し、津波発生の恐れがあれば、第二報として最も近くの最適な避難場所と地図のURLを配信。さらに、安否確認のメールが届き、受信者が指定された避難場所に到着した時点で画面をクリックすれば返信できる。最後に警報・注意報が解除されたことを知らせるメールを送る。
メール配信の想定は、200人程度の比較的小さなコミュニティー。登録人数が多くなるにつれ、システム動作が遅くなり、メール配信に時間がかかる場合があるという。
各コミュニティーでは、あらかじめ想定される津波の高さに応じた最適な避難場所を登録しておく必要がある。技術的には複数の避難場所を登録し、移動端末の位置情報を入手することで、受信者から最も近くて安全な避難場所の指示もできるという。
また、将来的には避難経路も含めた情報を提供できるシステムへの改良も検討する。これにより、土地勘のない観光客も避難場所に誘導できるようになる。
◇宮城の現場で社会実験
社会実験は、西松建設・佐藤工業・奥田建設・グリーン企画建設・上の組JVが担当している宮城県災害廃棄物処理業務亘理名取ブロック(名取処理区)の現場で行われた。
席上、あいさつに立った菅原理事長は「東日本大震災のような悲劇を二度と繰り返さないよう、津波に関する情報と避難先への誘導を有機的に結合したシステムの構築が急がれる。本システムが実用化され、将来の発生が予想されている東海・東南海・南海地震による津波被害の軽減に寄与することに期待したい」と語った。
この後、宮城県沖でマグニチュード6・5の地震が発生し、がれき処理現場に高さ3mの津波が襲来するとの想定で、避難訓練が行われた。
現場で作業していた約30人の作業員らは、メールが届くと、高さ約7mのピロティ形式で建てられた現場事務所に駆け足で逃げ込んだ。
実験後、今村教授は「実際の現場で運用できたことは大きい。システムの確実性を確認できたので、今後、他地域にも展開していきたい」と述べた。
また、西松JVの武田修治所長は「作業員の命を預かる立場として、1日も早いシステムの確立によって安全が確保され、安心して仕事ができることに期待したい」と話した。
システムの導入費は、メール端末の登録数などによって異なるが、画面制作費やネットワーク環境整備費、データベース構築費を含め、100万円以内で可能という。問い合わせはNPOリアルタイム地震情報利用協議会(電話03-5366-2720)。
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