スタッフ来場者との接触を通じて施設の魅力を高める (佐賀県立宇宙科学館) |
同社は、11年度からの3カ年の中期経営計画で空間活性化事業の拡大を掲げている。従来から手掛けていた展示装置のメンテナンスやミュージアムショップなどのオリジナル商品開発に加え、施設の管理運営まで担う事業だ。
指定管理者制度の創設を踏まえ、長崎歴史文化博物館を皮切りに、05年度から実績を増やしている。現在、管理運営を手掛ける14施設のうち運営委託の2件を除く12施設で指定管理者となっている。多くは第2期の更新段階にある。
同事業を手掛けるPPP事業部の中島秀男事業部長は「既存施設の再活性化を目指さなければならない」と既存施設の再生という役割を認識する。管理運営している文化施設は、同社が展示設計、制作、施工を手掛けていないものも多い。
約7年の経験で、来場者とのコミュニケーションが課題の一つとしてみえてきた。「展示装置を介在させ、施設のスタッフが来場者とコミュニケーションをとることが、住民の満足度アップにつながることが分かってきた」(中島部長)と、展示装置の機能や魅力だけに任せてしまうのではなく人同士の接点をいかに増やすかを成功のポイントに挙げる。
実現に向け、人材育成が管理運営の最も重要な課題となる。特に、指定管理者制度は管理運営期間が年単位で決められているため、施設をマネジメントする側が変わっても、サービスの質が低下しないよう施設で働くスタッフは変わらず能力アップを続ける必要がある。基本的にはOJT(職場内訓練)だが「スタッフに企画展を一から担当させ、その分野の専門性を持たせればきちんと育ってくれる」(同)と、現場の創意工夫による人づくりを実践する。
文化施設の魅力アップが、まち全体の活性化につながってきた。佐賀県立宇宙科学館“ゆめぎんが"で恐竜展を開催したところ、地元の飲食店にもお客が増えた。次の年には地元のグルメストリートとタイアップし、さらに地元への経済波及効果が高まった。地域密着の拠点を持ち地元とのコミュニケーションが生まれたことで、まちに向けたサービスの芽が出始めたことになる。
指定管理者としての提案は、地域ごとに異なる課題を把握しなければならないため、これまでの経験だけに頼らず、地域の事前調査は綿密に行う。
安全安心の視点でみると、東日本大震災以降、公共施設には防災拠点としての役割も求められている。中島部長は「まちで果たす役割が見えてきた。地元と協力しながら活性化につなげたい」と、顧客満足を始点に広がるサービスのあり方を追求する考えだ。
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