2012/05/16

建築は“縁約"の仕事 JIAが本利雄間氏招いてトークイベント

 日本建築家協会(JIA)の建築家クラブ運営ワーキンググループは、東京都渋谷区の同クラブで建築家の本間利雄氏を招き、金曜の会トークイベントを開いた。本間氏は「設計は取引ではない。引き渡した後も関係は終わらない」と述べ、建築は契約ではなく、将来にわたってかかわり続ける“縁約"であるべきと訴えた。

 本間氏は、地域に根差した建築家として約60年にわたって山形で活動している。自身を密集して支え合う地元のブナ原生林にたとえ「原生林は感度が良く、厳しい環境ほど感性が生きる。恵まれた環境に育てられたことに感謝したい」と、建築家としての能力が、自然豊かな地域で育まれたことを強調した。
 JIAについては「大学に入ったような気分だった」と、建築家仲間との出会いに感謝する一方、「会員を増やすという動きや会費を安くするのは間違いではなかったか。厳しい集団に選ばれて入ったという誇りがなくなっているのではないか」と問題提起した。
 コーディネーターを務めた大宇根弘司元JIA会長は「建築家の仕事は責任ばかり重く設計料が安い。これでは、将来にわたって若い人が入ってこない。また、公益を守ろうとしても、数が少なければ声が届かないという問題もある」と答え、本間氏の指摘する問題との整合をとって、山積する課題に対応する必要性を訴えた。
 地方と中央の関係について本間氏は「大手設計事務所と一緒に仕事をすることで、われわれの技術レベルが上がる。中央と地方の建築家が協力すれば、日本の隅々にまで良い建築ができる」と、さらなる協働に期待を寄せた。

『建築家の使命―本間利雄地域に生きる』 AmazonLink

Related Posts:

  • INAXデザインコンテスト金賞「フツウ・ノイエ」 環境を五感で受けとめる住宅 フツウノイエ 撮影:酒井広司   LIXILが主催し、上質な住空間を顕彰する第32回INAXデザインコンテストの公開審査会と表彰式が7日、東京・代官山のリストランテ・アソで開かれ、札幌市の「アカサカ シンイチロウ アトリエ」(赤坂真一郎代表)の「フツウ・ノイエ」が金賞に選ばれた。札幌市の都心に建つ住宅で、「都市と自然の境界にたたずむ、環境を五感で受けとめる住宅」をテーマにした。  公開審査では、応募総数347点の中から第一次審査で上位… Read More
  • グラフィソフトのiPad、iPhone専用アプリ「BIMx」とは?重力要素を持つウオークスルーソフト  建築意匠系のBIMソフト『ArchiCAD』を提供するCADベンダーのグラフィソフト(本社・ハンガリー)に、多くのユーザーから「図面データを外に持ち歩きたい」という要望が殺到している。 加えて世間にスマートモバイルが普及、新システム『BIMx』を開発し、昨年9月に米アップル社iPad、iPhone専用アプリケーションとして提供を始めた。グラフィソフトジャパン(東京都港区)の飯田貴プロダクトマーケティングマネージャーは「BIMxはVBの進化版… Read More
  • 新発田市新庁舎プロポーザル、応募案を審査前に一般公表  新潟県新発田市は、新庁舎建設事業に伴う基本・実施設計の公募型プロポーザルに応募した10者の技術提案書を公開した。提案内容を審査前に発表することで、透明性を確保しながら、『百年の計』となる同事業への関心を高めてもらい、市民との協働によるまちづくりを図るのが狙いだ。  1次審査は12日に開き、5者程度に絞り込む。14日に結果発表する。2次審査では、新たな提案図書を3月5日まで求め、これを同9-14日まで公開する。15日にプレゼンテーションとヒア… Read More
  • 青木茂氏のリファイン建築、下関の老人ホームがまったく新しい姿に  青木茂建築工房(青木茂主宰)が設計した満珠荘大規模改修工事リファイニングプロジェクトが完成した。眺望を最大限に生かしながら耐震補強するという命題を克服した青木氏は、「検査済証も交付され、法的にも新築と同等の評価を得ている。古い建物がよみがえることを認識していただければ幸いです」と語った。2月25日にオープンする。  下関市が老人休養ホームとして34年間活用してきた満珠荘を、宿泊施設としてリニューアルするプロジェクト。「見た瞬間にイメージした… Read More
  • JIA新人賞は西田司・中川エリカ、乾久美子各氏 ヨコハマアパートメント 撮影:鳥村鋼一  日本建築家協会(JIA)は5日、JIA新人賞、同25年賞、同環境建築賞を発表した。第23回JIA新人賞には、ヨコハマアパートメントを設計した西田司氏・中川エリカ氏(オンデザインパートナーズ)とフラワーショップHを設計した乾久美子氏(乾久美子建築設計事務所)が選ばれた。  発表会で西田氏は「栄誉ある賞をいただき光栄に思う。建築を通して社会、まちに寄与していきたい」と述べ、中川氏は「人が集まることの価値… Read More

0 コメント :

コメントを投稿