日本建築家協会(JIA)の建築家クラブ運営ワーキンググループは、東京都渋谷区の同クラブで建築家の本間利雄氏を招き、金曜の会トークイベントを開いた。本間氏は「設計は取引ではない。引き渡した後も関係は終わらない」と述べ、建築は契約ではなく、将来にわたってかかわり続ける“縁約"であるべきと訴えた。
本間氏は、地域に根差した建築家として約60年にわたって山形で活動している。自身を密集して支え合う地元のブナ原生林にたとえ「原生林は感度が良く、厳しい環境ほど感性が生きる。恵まれた環境に育てられたことに感謝したい」と、建築家としての能力が、自然豊かな地域で育まれたことを強調した。
JIAについては「大学に入ったような気分だった」と、建築家仲間との出会いに感謝する一方、「会員を増やすという動きや会費を安くするのは間違いではなかったか。厳しい集団に選ばれて入ったという誇りがなくなっているのではないか」と問題提起した。
コーディネーターを務めた大宇根弘司元JIA会長は「建築家の仕事は責任ばかり重く設計料が安い。これでは、将来にわたって若い人が入ってこない。また、公益を守ろうとしても、数が少なければ声が届かないという問題もある」と答え、本間氏の指摘する問題との整合をとって、山積する課題に対応する必要性を訴えた。
地方と中央の関係について本間氏は「大手設計事務所と一緒に仕事をすることで、われわれの技術レベルが上がる。中央と地方の建築家が協力すれば、日本の隅々にまで良い建築ができる」と、さらなる協働に期待を寄せた。
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