2012/05/09

大槌町では復興計画にInfrastructure Modelerが採用 オートデスクの新社長ルイス・グレスパン氏に聞く

 建築や土木に加え、製造業など幅広い領域にソフトウエアを提供している米国オートデスク社。日本法人オートデスク(東京都中央区)のルイス・グレスパン社長は「各分野の先導役として、ユーザーをけん引していく」と就任の抱負を語る。建築分野で普及し始めたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、土木を含む社会インフラの新たな生産手法としても注目を集めている。同社のマーケティング戦略を聞いた。

--就任後2カ月が過ぎた

 「就任前に部外者の立場では、オートデスクには建築やメディアの領域に強いソフトベンダーというイメージを持っていた。立場が変わり、当社の実態を知って初めて、製造業や社会インフラの分野でも幅広く強みを発揮していることに驚いた」
 「各分野に最善のソリューションを提供することがCADベンダーとしての役割であり、常にユーザーを先導することを目標に活動していく。現在はエンジニアリングやエネルギー、社会インフラの部分の需要が高まり、それらの分野も強化するため、組織の体制も一部見直した」

--マーケティング戦略は

 「製品を売るのではなく、あくまでもソリューションを売る。ユーザーと一体になり、業務の改善や品質の向上を提案していく。BIMのソリューションはプロジェクト関係者が複数になり、各プレイヤーを結ぶ横断的なツールが求められる。建築領域だけでなく、各分野を牽引するソリューションプロバイダーとして歩んでいく」

--注目しているBIMの事例とは

 「被災地での復興計画策定の動きは本格化しているとは言えない。将来を見据え、十分な検討は必要であるが、ゆっくりとはしていられない。BIMの利点でもある3次元モデルによる可視化は、合意形成などに有効であり、復興プロジェクトの支援ツールとしても貢献できるはずだ」
 「津波で壊滅的な被害を受けた岩手県大槌町では復興計画策定に際し、当社の3次元モデリングツール『Infrastructure Modeler』が活用されている。地域別の復興イメージを3次元モデル化し、さまざまな角度からCG(コンピューターグラフィックス)で確認する手段として効果を発揮した」
 「BIMは復興支援に貢献できる手法であり、成功事例を積極的に水平展開していきたい。視点を変えれば、都市全体のエネルギー効率を判断する手がかりとしても活用でき、環境配慮など社会貢献の観点でも有効なツールとして機能するはずだ」

--現在の業績は

 「企業は調達に慎重な姿勢を持っており、自社のビジネスにプラスか否かをシビアに見極めて投資する傾向がより強まっている。それでも直近の売上高は前年同期比で14%の増加となり、日本を含むアジア太平洋地域は9%増を達成した。BIMの普及を追い風に業績は右肩上がりに推移している。ユーザーへの価値提供ができている証拠だ。これからも、建設業界の生産プロセスを変えていく意気込みで活動していく」
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社長就任は2月末。2000年にPTCジャパン入社後、バイスプレジデントなどを経て、10年にBMCソフトウェアの日本支社長を歴任。米国イリノイ州出身。65年11月21日生まれ、46歳。

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