2012/05/18

受注回復か? ゼネコン4社の決算が1兆円超え 本紙記者座談会

鉄筋、型枠などの工種は労務費が上昇している。
(写真と本文は関係ありません)
A ゼネコン各社の2012年3月期決算が出そろったけど、今回はどんな傾向かな。
B 受注は回復している。大手・準大手26社の単体では、土木が前期比27・6%増、建築が0・5%の微減だった。大手4社はそろって1兆円を超えている。
C 土木では東日本大震災に伴う復旧・復興関連も受注を押し上げた。ただ受注が回復したとはいえ楽観ムードにはない。復旧・復興関連は別として、通常の工事は依然として低水準のままだからだ。

D 海外受注を伸ばしたゼネコンも多い。ここ数年で着実に海外を伸ばしている印象だ。
A 工事採算の面では?
B 土木の工事率粗利率は9%台まで改善した一方、建築工事は5%台に低下した。こちらも土木がけん引役で建築がやや足を引っ張っている。
D 依然建築工事は少ないパイを巡って価格競争が激化している。それに加えて鉄筋、型枠、内装などの工種で労務費が上昇しコストを押し上げ、ダブルパンチ状態だ。
C 大手、準大手ともに建築の工事粗利益率が低下、特に準大手は3・7%と非常に厳しい。「大手はいったいどうやって利益を捻出しているのか」と羨望の眼差しを向ける準大手ゼネコンもある。
A 決算にあわせて中期経営計画を発表したゼネコンもあるようだが。
B 各社とも受注や売上などの目標数値はやや保守的に見積もった印象がある。一方で、利益はきちんと確保しようという姿勢が鮮明だ。海外事業の強化を打ち出すゼネコンも多い。過去の反省に基づいて施工や収益の管理を徹底し、確実に利益を確保したい考えだ。
C このほか、エンジニアリング事業やPPP事業など、建設周辺ビジネスの強化を盛り込む動きもある。

◇設備各社は利益面が改善傾向

A 設備会社の決算はどうだったろう。
E 空調設備会社、電気設備会社とも震災の復旧・復興工事の受注、完工が数字に上がって利益面も改善傾向にある。
F 確かに繰越工事高も増えてきた。むしろ反動で次期の受注が下ぶれしている感すらある。
A 設備会社でも数社、中期経営計画を発表していたが。
F 空調の大手数社は前期に中期経営計画をまとめ、今回の決算が初年度だった。この5月は、ダイダンや住友電設、関電工などが中期経営計画を発表した。
E 関電工の決算発表は4月の末だったが、次期の業績予想や人事、中期経営計画の発表は5月中旬と言われていた。次期社長の水江博副社長は46年ぶりのプロパーだし、中期経営計画もエネルギー事業進出など発展基盤を作る内容だ。
F 社長交代で言えば、三機工業の梶浦卓一社長の就任発表があったのは連休前の4月27日で、今回の説明会が初めての公の発言の場だった。
G 建設機械は、景気が減速している中国と債務危機の欧州以外、日本を含め世界的に需要が好調だが、各国の大型景気対策によるもの。コマツと日立建機は13年3月期も前期を上回る業績を見込み、3期連続増収増益を予想している。建機業界は有卦(うけ)に入るようだ。
H メーカー各社も海外、特に東南アジアを中心に売上の拡大を図るところが目立つ。東南アジアに力を入れるという太平洋セメントの福田修二社長が「国が成長する時にはセメントが必ず必要になる」と話していたのが印象的だった。

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