2012/05/07

都心回帰の傾向が鮮明に 森トラストが23区のオフィス供給量調査

 森トラストは、東京23区の大規模オフィスビル供給量調査2012をまとめた。2012年までは高水準の供給が続くが13年以降は抑制傾向に転じ、特に都心3区(千代田、中央、港区)の12-15年の供給割合が7割強まで上昇するなど都心回帰傾向が鮮明になると予測。東日本大震災の影響からコスト高となっても安全性の高いビルを選ぶ傾向が強まっており、こうした企業ニーズに合致する新築・築浅ビルへの需要が中長期的に堅調に推移する可能性が高いとしている。

 調査は延べ1万㎡以上のオフィスビルを対象に11年12月に実施した。供給量の推移をみると、11年の124万㎡に続き、12年は32件176万㎡と高水準の供給が続く。大手町・丸の内地区の建替案件の竣工が集中することが要因。だが、好況期の影響がはく落する13年以降は再び供給抑制傾向となり、13-14年は年間60-70万㎡前後と過去平均を大幅に下回る見通しだ。
 区別でみると、都心3区は08-11年が188万㎡だったのに対し、12-15年には総じて上昇。供給量は289万㎡でシェア7割に達する見込み。一方で江東区の割合は、08-11年の17%と比べて12-15年には3%まで大幅に低下。都心回帰傾向が鮮明になっている。
 主因は、賃貸オフィス市場の低迷に伴うリスク回避志向の高まりで、市況の回復が本格化するまではこうした都心集中型の供給傾向が続くと予想している。
 調査には、東京、大阪、仙台の同社運営ビルに入居しているテナント企業303社を対象にした事業継続計画(BCP)に関する意識調査結果も盛り込んでいる。
 震災前は「BCP対応を最優先する」企業は3%にとどまっていたものの、震災後は30%まで増加。エリアを問わずオフィスビルでもBCP対応ニーズの高まりを裏付ける結果となった。
 耐震性能と賃料との関係をみると、8割強の企業が賃料が割高でも耐震性能にすぐれたビルを選定対象とし、特に「免震ビル」が望ましいとした企業の中では「ある程度高くても選定対象になる」が20%を超えている。
 これらを踏まえ、BCP対応の優劣によるビル選別は、今後計画されるビル性能を一層向上させ、災害に強いビルの供給を促すと考えられるが、ビル単体の対策には限界もあることから、都市全体を見据えた総合的な防災対策が必要と指摘している。

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