2012/05/13

国交省BIM初試行のインパクト!「新宿労働総合庁舎」を徹底分析 -6-

国交省のBIMに関するリリース
国土交通省がBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と出会ったのは6年前。そのきっかけをつくったのは北陸地方整備局の小黒賢一営繕部長だった。「GSA(米国連邦調達庁)やノルウェーなどの取り組みには衝撃を受けた」と、2006年5月にフィンランドのヘルシンキで開かれた政府系官庁営繕組織「TWN」(ザ・ワークプレース・ネットワーク)の会合の様子が脳裏から離れない。

 当時、官庁営繕部整備課の企画専門官だった小黒氏はTWNのメンバーとして出席した。GSAは発注仕様書で3次元データの納品を義務付ける準備を進めており、そこで初めてBIMの存在を知った。帰国後すぐに、その状況を報告したが、当時は「まだBIMの考え方を理解してもらえなかった」と明かす。

◇BIMの衝撃

 四国地方整備局の今枝知子営繕部整備課長も「BIMの衝撃」を目の当たりにした国交省職員の一人だった。08年にシカゴで開かれたGSA主催のワークショップに出席した際に「海外ではもう火がついている現状を知り、必ず日本にもBIMの流れが来る」と直感した。
 官庁営繕部内に、BIMの導入に向けたプロジェクトチームが発足したのは出会いから3年後の09年8月だった。BIMの有効性を検証し、何ができるか、そして何が変わるかを徹底的に話し合った。それは生産プロセスの改革につながる議論でもあった。
 そもそもGSAがBIMを導入した背景には、生産プロセスに潜む無駄の排除が目的にあると言われている。全米にある約8300もの保有施設を管理する中で、膨大な施設情報を一元化する上でBIMの導入に行き着いた。米国ではGSAが起爆剤となり、設計者や施工者などプロジェクト関係者が一斉にBIMを志向する動きに発展した。

◇前橋合庁でも新たな検証

 官庁営繕部が10年3月31日に報道発表した「BIM導入プロジェクトの開始について」は、4年余りの歳月を経て、ようやくたどり着いたスタート地点でもあった。報道資料では、営繕業務にもたらすBIMのメリットとして「設計内容の可視化」「建物情報の入力・整合性確認」「建物情報の統合・一元化」の3つに着目していると明記した。
 現在、官庁営繕部が指定するBIM導入の試行プロジェクトは3件。初弾の新宿労働総合庁舎に続き、11年7月には延べ1万7800㎡の前橋地方合同庁舎、同年9月には延べ2980㎡の静岡地方法務局藤枝出張所についても試行プロジェクトに位置付け、プロポーザルとして設計業務を相次ぎ公示した。
 施工段階に入った新宿労働総合庁舎では、既に設計段階で可視化と整合性確認の2つについて一定の効果を確認している。吉野裕宏官庁営繕部整備課施設評価室長は「試行案件を一つひとつこなしていく過程で、BIM導入の課題を整理し、プロジェクト関係者の中で共有しながら最適解を導き出す」と強調する。設計中の前橋地方合同庁舎と藤枝出張所では、初弾案件での成果を踏まえ、新たな切り口でBIMの検証を行おうとしている。

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