2014/02/28

【新千歳空港】深夜作業で耐震化! 大規模災害から守る

大規模地震災害への対応が全国的に求められている中、北海道の空の玄関口である新千歳空港では、空港施設の耐震化が進められている。地震発生時の被害を小さくし、早期に空港を再開できるようにするため、滑走路と誘導路地下にある河川函渠の耐震補強工事や、周辺地盤の液状化対策工事に取り組んでいる。特に液状化対策工事は、航空機の発着がなくなる午後11時から午前6時までの真夜中の作業を余儀なくされ、事業主体である北海道開発局札幌開発建設部は計画的な工程で工事に当たっている。秋葉洋一千歳空港建設事業所長は「大規模災害時に空港機能を維持するため、工事を進めている。厳しい作業だが、北海道と日本の経済活動を支えるため努力している」と話している。

 新千歳空港はA滑走路とB滑走路の2本の滑走路を持ち、延長は各3000m。旅客実績(2012年度)は国内線1638万人、国際線108万人だった。国内線は成田や関西国際空港にLCC(格安航空会社)が就航し、新たな需要を掘り起こしたことなどにより、東日本大震災前を上回る水準に回復した。国際線はバンコク線、ホノルル線開設や既存路線の増便などにより、初めて100万人を超え過去最高となった。

◆乗降客数は国内第3位/混雑度「レベル2」

主な耐震対策個所
 羽田空港、成田空港に次ぐ乗降客数第3位の空港となり、12年には混雑度がレベル3(最も混雑度の高い空港で、発着調整が必要な空港)に次ぐレベル2(レベル3に次いで混雑度の高い空港で、円滑なスケジュール設定のためのアドバイスが必要な空港)に指定されている。
 空港利用者数が増加する中、札幌開建では大規模地震時に滑走路や誘導路の被害を防ぐため、07年度から耐震化を進めている。滑走路と誘導路地下にある河川函渠と、その周辺地盤を耐震補強するもので、13年度はD誘導路地下の美沢川函渠とB滑走路地下の1号沢函渠で耐震補強
工事、A滑走路とD誘導路の液状化対策工事、4号排水路で補強工事を行っている。
薬液貯蔵槽
 このうち、液状化対策工事は空港内に設置したプラントで薬液を製造し、滑走路に開けた薬液注入孔に注入することで、美沢川函渠周辺の地盤を締め固める。薬液注入孔は約2m間隔で掘削し、注入した薬液は約4時間で硬化する。地盤が盛り上がり滑走路の変形を防ぐため、変異を計測しながら進めている。1日当たり80-90m3の薬液を注入する。

◆空港予算85%の大幅増/工事の進捗に弾み

美沢川函渠耐震補強
美沢川函渠の耐震補強工事は、地下15mに埋設された函渠のコンクリート壁に鉄筋(ポストヘッドバー)を挿入することで、河川函渠の崩壊を防止する。D誘導路地下で進められている耐震補強工事では、30mの区間に約3000本のポストヘッドバーを壁面の上下左右4面に挿入する作業が行われている。
 札幌開建ではA滑走路の耐震化を優先して進めており、B滑走路の耐震補強も引き続き取り組む方針だ。14年度の北海道開発事業費のうち、直轄の空港予算は前年度比85%の大幅増となる74億7000万円(事業費ベース)が計上されたほか、札幌開建が所管する13年度補正予算およびゼロ国債には、合計で24億6900万円(同)の空港予算が措置されており、工事の進捗に弾みがつきそうだ。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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