2014/02/16

【建築士支援】エージェントが仕事獲得、ネットワークづくりをフォロー

映像クリエーターや医師などのエージェンシー事業を展開するクリーク・アンド・リバー社(本社・東京都千代田区、井川幸広社長)は2013年、建築士事務所に設計案件を紹介し、あるいは建築士を設計組織に紹介する「建築エージェンシー事業」を立ち上げた。ことしは、事業会社を立ち上げ展開を加速する。目標は「建築士の生涯価値実現にある」と話す井川社長に、その考えを聞いた。
 建築士は、設計コンペの準備を含め多くの時間を仕事の獲得に費やしている。「この部分をエージェントが担うことで、設計に専念し仕事のパフォーマンスを上げてもらいたい」と井川社長。
 エージェントを介すことで、従来つき合いのなかったクライアントから受注できる。同社グループ全体のクライアント約3000社の中からも、医療福祉施設を始めとする設計ニーズを掘り起こす。「北海道から沖縄まで、さらにアジアへと活躍の場を広げられるようにしたい」と見込む。
 4年ほど前、台湾のディベロッパーからリゾート開発の設計について相談を受け、建築士として東泰規、北山恒、坂茂、下田明宏の4氏のチームと、浜野安宏氏を紹介したところ、高く評価された。
 「日本の建築士は、どの国でも通用する感性とクオリティーを持っているが、本人たちが気づいていない。これは、もったいない。話し合いで契約書を補えるような仕事の進め方も評価されている」
 上海、北京、ソウルの各現地法人でも営業を展開する。
 クライアントにとっても、建築士の選択肢が増え、実績を基に選定しやすくなる。「さらに建築士の信用を保証できれば、クライアントの不安を払拭し、より建築士が活躍しやすくなる」とみる。
 最終的には、建築士とクライアントを直接結びつけ、メンテナンスまでかかわれるようにするのが理想だ。
 一方、エージェンシーを通して、建築士同士のネットワークの形成も促す。「個人事務所同士の業務提携や、個性の組み合わせによる面白い仕事ができる。インテリアコーディネーターなどをエンドユーザーに紹介すれば、スペシャリスト同士で付加価値を高め合うことにもなる」
 建築士教育にも注力する。「センスは教えられないが、CADや3次元CADの講習や有名な建築士を招いた講演などを考えている」
 自らは、テレビディレクターの出身。フリーランスを経て、1990年に同社を設立。組織にとらわれず、自分のテーマを持ち、腕一本で食べていくフリーランスの「プロフェッショナル」たちに、活躍の場を提供してきた。
 現在ではクリエーター5万人、各事業会社に医師6万6000人、ITエンジニア1000人、弁護士6100人、会計士・税理士など2万人が所属。13年、ファッションデザイナーとともに建築士について事業を立ち上げた。1年がたち、約70社から200件を超える依頼があった。「ことし中に1000件までの拡大を目指したい」と意気込む。
 また、1月には隔月刊誌『アーキテクツマガジン』を創刊、広く建築業界の良さを発信するとともに、事業の認知度も高める。
 フリーランスは、リタイアすれば退職金も企業年金もない。残るのは自らの実績だけだ。「建築士が残す設計図やこれに付随する知的財産は、集めることで価値が高まる。他の建築士が、類似施設を検索して参考にできるようにしたい。その閲覧に伴うライセンスフィーが発生できるのでは」。こうして「建築士の生涯価値の向上を、仕事を辞めた後まで一貫して実現したい」と考えている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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