2014/02/13

【学校建築】教育先進国フィンランド、校舎は自由で柔軟、そして安全に

「誰しも学校の音や匂いを覚えているもの。学校とはただ授業を行う場ではなく、人の考え方に影響を与える環境そのものなのだ」。そう語るのは、北欧・フィンランドで国家教育委員会の主任建築家を務めるレイノ・タパニネン氏。1月28日に文部科学省国立教育政策研究所が開いた文教施設講演会で、フィンランドの公立学校施設について語った=写真。
 国際学力調査(PISA)で常にトップクラスの成績を誇り、教育先進国として知られるフィンランド。無料教育や学校側の自由度の高い運営、教師の質の高さなどソフト面の教育政策が日本では注目されているが、学習環境の基盤である校舎そのものへの投資が不可欠であるとタパニネン氏は指摘する。
 質の高い学習環境のために必要なのは「高い自由度と可変性を確保することだ」と断言する。学習意欲を刺激するには、同じ規模の教室が並ぶのではなく、多機能の教室・空間で構成し、時には「学校という建築そのものを数学・物理の教材にできる」柔軟性が求められるとも。
 設計に際しても、フィンランドにおける学校建築は一般建築と同じ法、規則に則って建設されるため、学校建築の多くが建築コンペによる多様な設計で建設されている。「学校に関する法令として適用されるのはたった1つ、『生徒には安全な学習環境が保証されなければならない』というものだけだ」
 自由と柔軟性を重視した学校建築の建設を進めるフィンランドだが、2007年、08年に学生による無差別殺傷事件が発生した際には、校舎の安全性が疑問視されたという。「防弾の壁、施錠の強化、監視カメラの設置などを求める声もあった」とタパニネン氏。「しかし結局は、校舎の透明性をより高めることで安全性を高める方針を取った。恐怖に負けて閉じこもっても問題の解決にはならない。大切なのはリスクを分析し、予防することだ」と語り、「開かれた学校」の重要性を強調した。
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