東日本旅客鉄道(JR東日本)川越線の指扇(さしおうぎ)駅で、南北の敷地高低差による地域分断を解消するための「指扇駅南北自由通路・駅舎橋上化工事」が東鉄工業埼玉支店の施工で進められている。駅舎橋上化に合わせ、地盤を強化するための土留め工事も実施。軟弱で高低差のある地盤や列車運行への影響、制約された時間という厳しい条件の中で、建築・土木・線路部門が三位一体となった総合力をいかんなく発揮し、難題を克服した。地域の発展に大きく貢献する橋上化工事は、3月9日の北口供用開始を目指し、内装工事が急ピッチで進められている。
◇地域に寄り添うデザイン
旧駅舎は、南側にしか改札がなく、北側へ行くには、西側にある狭あいな歩行者用トンネルか、東側にある踏切を通らなければならなかった。新駅舎と一体となった長さ37m、幅6mの自由通路整備は地域住民、駅利用者の悲願でもあった。
S造3階建て延べ1814㎡の新駅舎の外観には、日本古来の建築要素である大屋根、庇、緑を設けてまちの固有性を継承。周辺に多くの社寺があり、古くから土に親しんできた地域性を考慮し、外壁は日本瓦に近い配色とし、一部に土をイメージしたレンガタイルを使っている。
内部には吹き抜け空間を設けることで、外部が見渡せるなど視覚的連続性を高め、街並みとの一体感を創出。4基のエレベーターを始め、5基のエスカレーター、高齢者・障害者の利用に配慮したトイレの設置など、バリアフリー対策も充実している。設計は東日本旅客鉄道大宮一級建築士事務所が担当した。
◇各部門が知恵を出し合って
戦前に完成した木造の旧駅舎が老朽化していることに加え、荒川の窪地に堆積した軟弱地盤上にあるため、橋上化に合わせて土留め工法でホーム、線路地盤の強度を確保し、工事を進める必要があった。駅は南北に傾斜した地盤上にあり、北側が南側より約3m低い。傾斜している北側の法面には、アースアンカーを計22本打設し、南側は切梁工法で山留めした。
建物本体を支える杭は、線路への影響を最小限に抑えるため、一部に低振動・低騒音で施工可能なTBH工法を採用。列車の制限範囲となる南北のホーム下は同工法によってそれぞれ5本ずつ、計10本を深さ約30mまで打設している。
東鉄工業埼玉支店指扇駅工事所の青木義晴所長は、難しい条件下での施工に当たって「土木、建築、線路部門が一体となって課題解決に向けて知恵を出し合った」とした上で「1つの支店で総合力を発揮できるのがわれわれの強み」と自信をみせる。
建築工事は、1日に2時間30分しかない線路閉鎖の間に鉄骨を組み上げる必要があったため、地上でパーツをあらかじめ地組みするなどの効率化を図り、合計約1300のピースを予定どおり約4カ月で組み上げた。
線路管理では、杭打設などの基礎工事が軌道に与える影響を毎日ミリ単位でチェックし、列車の安全な運行に万全を期した。青木所長は「土工事では24時間何が起こるかわからない状況の中、基礎工事が終わるまで気を抜けなかった」と振り返る。
◇住民、利用者への配慮徹底
騒音対策にも細心の注意を払い、旧駅舎の杭頭処理に当たっては防音ルームを活用するなど、周辺への配慮も徹底した。また、週間工程表を掲示するなど、駅利用者の安全確保と近隣住民への工程周知を図った。
青木所長は、大宮駅の改修や東川口駅の建て替えなどに携わってきたが、駅橋上化を指揮するのは今回が初めて。駅舎の供用開始を間近に控え、「新たな駅舎が地域の発展に寄与してくれればうれしい」と期待を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
◇地域に寄り添うデザイン
旧駅舎は、南側にしか改札がなく、北側へ行くには、西側にある狭あいな歩行者用トンネルか、東側にある踏切を通らなければならなかった。新駅舎と一体となった長さ37m、幅6mの自由通路整備は地域住民、駅利用者の悲願でもあった。
S造3階建て延べ1814㎡の新駅舎の外観には、日本古来の建築要素である大屋根、庇、緑を設けてまちの固有性を継承。周辺に多くの社寺があり、古くから土に親しんできた地域性を考慮し、外壁は日本瓦に近い配色とし、一部に土をイメージしたレンガタイルを使っている。
内部には吹き抜け空間を設けることで、外部が見渡せるなど視覚的連続性を高め、街並みとの一体感を創出。4基のエレベーターを始め、5基のエスカレーター、高齢者・障害者の利用に配慮したトイレの設置など、バリアフリー対策も充実している。設計は東日本旅客鉄道大宮一級建築士事務所が担当した。
◇各部門が知恵を出し合って
戦前に完成した木造の旧駅舎が老朽化していることに加え、荒川の窪地に堆積した軟弱地盤上にあるため、橋上化に合わせて土留め工法でホーム、線路地盤の強度を確保し、工事を進める必要があった。駅は南北に傾斜した地盤上にあり、北側が南側より約3m低い。傾斜している北側の法面には、アースアンカーを計22本打設し、南側は切梁工法で山留めした。
アースアンカーを計22本打設 |
建物本体を支える杭は、線路への影響を最小限に抑えるため、一部に低振動・低騒音で施工可能なTBH工法を採用。列車の制限範囲となる南北のホーム下は同工法によってそれぞれ5本ずつ、計10本を深さ約30mまで打設している。
東鉄工業埼玉支店指扇駅工事所の青木義晴所長は、難しい条件下での施工に当たって「土木、建築、線路部門が一体となって課題解決に向けて知恵を出し合った」とした上で「1つの支店で総合力を発揮できるのがわれわれの強み」と自信をみせる。
建築工事は、1日に2時間30分しかない線路閉鎖の間に鉄骨を組み上げる必要があったため、地上でパーツをあらかじめ地組みするなどの効率化を図り、合計約1300のピースを予定どおり約4カ月で組み上げた。
線路管理では、杭打設などの基礎工事が軌道に与える影響を毎日ミリ単位でチェックし、列車の安全な運行に万全を期した。青木所長は「土工事では24時間何が起こるかわからない状況の中、基礎工事が終わるまで気を抜けなかった」と振り返る。
◇住民、利用者への配慮徹底
騒音対策にも細心の注意を払い、旧駅舎の杭頭処理に当たっては防音ルームを活用するなど、周辺への配慮も徹底した。また、週間工程表を掲示するなど、駅利用者の安全確保と近隣住民への工程周知を図った。
青木所長は、大宮駅の改修や東川口駅の建て替えなどに携わってきたが、駅橋上化を指揮するのは今回が初めて。駅舎の供用開始を間近に控え、「新たな駅舎が地域の発展に寄与してくれればうれしい」と期待を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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