ゼネコンの社員不足が深刻化しつつある中、各社の中途採用競争が過熱している。即戦力となる若手・中堅の採用は、「非常に少ないパイをめぐる奪い合い」(準大手ゼネコン)の様相を呈してきた。ホームページで中途採用の情報を掲載する社が増え、中途採用を通年実施に切り替える動きも多い。ただ、大手ゼネコンには準大手から人材が入るケースもある一方、準大手の場合は「同業ゼネコンからの中途採用はほとんど期待できない」ことから、設備工事業やサブコンなど他業種からの採用も視野に入れている。
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ある準大手ゼネコンは1月下旬、ホームページに中途人材の募集情報を新たに掲載した。20代後半-30代後半の経験者が対象だ。「人員構成是正のため」と内情を明かしながら募集を進めている。この社に限らず業界全体に言えることだが、20代後半-30代後半の社員は極端に少なく、各社ともノドから手が出るほど欲しい。地方自治体などに転職・流出するのも多くはこの層だ。
各社が募集しているのは、土木、建築、設備などの技術職だが、「ほぼすべての職種で不足している。事務系職員も不足傾向にある」(準大手)。一方、事業量の増加に伴い「積算がパンク寸前」や「機電系の人材がスポット的に足りない」といった声もよく聞く。
「当社にはなかなか良い人材が来てくれない」。ある準大手ゼネコンの社長はため息混じりだ。待遇面なども見直し、従来の中途採用に比べて手厚くしたものの、「そもそも人材市場に流通している即戦力の絶対量が少ない。設備やサブコンなどの人材にも目を向けざるを得ない」
売り手市場だけあって募集のハードルは低く設定しており、学歴も「高卒以上」や「高専卒または短大卒以上」とするケースが多い。しかし、それは技術者不足に悩む自治体も同じ。年齢面など採用条件を大幅に緩和して中途採用を進める自治体が増えた。官と民、発注者と受注者とが互いに即戦力を奪い合う複雑な構図がある。
一方、他産業の動向も気になるところだ。自動車を始めとした他産業ではベースアップなどの話題もあり、「待遇面で建設業が引き離され、ますます人が来なくなるのではないか」との見方がある。
帝国データバンクが1月下旬に発表した、全産業を対象に実施した「人手不足に対する企業の意識調査」によると、正社員の不足感が最も高いのは建設業で、不足感を訴える社は59.7%に達した。人材不足を解消できないまま事業量の増加に対応すれば、「必ずどこかにボトルネックが生じてくる」(準大手)とし、施工管理や安全対策などへのしわ寄せを懸念する声もある。
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