2014/02/05

【建築】圓蔵院・庫裡 建材に職人の手作り活かし丹念な設計

さいたま市指定天然記念物のシダレザクラと大イチョウが見ごろの季節に多くの見学者が訪れる圓蔵院(さいたま市見沼区)。2012年に完成した住職と家族の住む庫裡(くり)は、埼玉建築士会が主催する第1回埼玉建築文化賞の併用住宅部門の最優秀賞を受賞した。
 職人によるオーダーメードの建材を重視する設計者、納得のいく施工を追求する職人の思いが重なり、互いに連携を深めながら、施主が願う高品質な建物を丹念に造り込んだ。仕事と生活を分けて考える施主の方針のもと、新たな庫裡は本殿と赴きの異なる現代的デザインとした。規模は木造2階建て延べ373㎡。植栽に囲まれた緑の空間の中で、漆喰の美しい白壁が印象よく仕上がっている。
 設計を担当した大樹建築・造形研究所の森大樹代表は「同じ経費をかけるなら、既製品ではなく職人の手作りを使う」と建材へのこだわりを持つ。今回の工事でも多くの職人の持ち味が発揮された。
 白壁は、職人が納得のいく仕上がりとなった。ダイニングの照明は森代表がステンドグラスを選び、職人が照明器具を作って完成させた。住職が子どものころに植えたシラカシは伐採後、仏壇に再利用するなど随所に手作りの良さを引き出した。
 「職人が一生懸命に取り組むプロセスを施主が見て、家への愛着も深まっている」と多くの人の思いが詰まったプロジェクトとなった。
*「運斤成風」(うんきんせいふう)
巧みな技のこと。技術者たちの風を巻き起こすような創造過程に迫ります。
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