2015/08/29

【現場最前線】現場からのアイデアで工期短縮 PCaPC工法で進む東洋水産福岡物流C新築

福岡市の先進的モデル都市・アイランドシティ。臨海部物流拠点の機能も担う同地の一画でPCaPC(プレキャスト・プレストレストコンクリート)工法による冷蔵倉庫の建設が進んでいる。施工を担う西松建設の安井豊作業所長は「現場がきれいに保たれ、工程どおりに進捗する。足場をほとんど組まないため、危険要素が少なく、在来工法に比べて安全」と手応えを感じている。

 この「(仮称)東洋水産福岡物流センター新築工事」は、冷蔵倉庫棟、アイス棟、事務所棟の3棟を一体的に建設する。冷蔵倉庫棟がPCaPC造、残り2棟がS造で、ことし1月に着工した。4階建ての冷蔵倉庫棟をメーンに躯体工事が進んでおり、7月15日現在で4階のPCaPC建て方、4階の床スラブの半分まで完了し、躯体工事は4階の残り半分と屋上を残すのみとなっている。


PCaPC工法は品質向上、省力化、工期短縮に寄与する
東洋水産が冷蔵倉庫にPCaPC工法を採用するのは初めて。職人不足が懸念される中、発注の段階で設計・監理を担当する今川建築設計事務所と工法を検討し、工期を考慮してPCaPC工法の採用を決定した。安井作業所長は「職人不足への対応に加え、雨など天候の影響を受けにくいため、品質向上、安定供給、省力化、工期短縮に寄与する」とし、「現場には約80人の作業員がいるが、在来工法であれば100人超の人員が必要だった。また、型枠などの材料もほとんど要らないため、環境負荷の低減にもなる」と強調する。

スパンクリート床で作業の効率化、快適化を実現
冷蔵倉庫棟の躯体工事に当たっては、スパンクリート床を仮設作業床に利用することで、上部のPCaPC作業を止めることなく上階への建て方を順次行う一方、スラブの掛かった下階では現場鉄筋、型枠の組立作業を行い、作業の効率化を図っている。スパンクリート床が屋根の役割を果たす下階は炎天下での作業を回避でき、快適な作業環境をつくり出すことで生産性の向上にもつなげている。
 基礎躯体工事では、地盤が崩れやすい砂層な上に、深さ約2mで湧水が発生するため、「当初予定していた在来工法では工期が間に合わない恐れがあり、鋼製型枠を使った先行埋め戻し工法を現場から施主に提案した」と振り返る。

現場提案の鋼製型枠で湧水に対処
基礎地中梁のコンクリート打設に鋼製型枠を使い、打設前に型枠の周囲を先行して埋め戻し、掘削床に捨てコンクリートを打設することで砂地盤や湧水に対処。現場では、職員や協力会社に施工方法のアイデアを提案させ、新技術・新工法も採用できるかどうかを協議している。鋼製型枠は、その代表例で、「施主のニーズを満足させ、われわれが技術者として誇りを持てる現場にしたい」と意気込む。
 安井所長は、今回の工事に当たって東洋水産の冷蔵倉庫を見学し、今川建築設計事務所からも意見を聞いた。生じやすい不具合を事前に把握するのが狙いで、「温度差のある部屋同士をつなぐ設備配管の壁貫通部分などに結露が発生しやすいため、その部分はより精度が高く収まるよう慎重に確認しながら施工している」

完成予想パース
現在の進捗率は45.5%(7月15日現在)。「関係者全員が笑顔で働ける職場環境づくり」に努めながら、「工期を厳守し、完成まで無事故で終えたい」と気を引き締める。

【工事概要】
▽発注者=東洋水産
▽設計・監理=今川建築設計事務所
▽施工=西松建設
▽規模=PCaPC・S造4階建て塔屋1層延べ2万0243㎡
▽敷地面積=1万8901㎡
▽建築面積=7545㎡
▽工期=2015年1月6日-16年2月29日
▽工事場所=福岡市東区みなと香椎2-25-17
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

0 コメント :

コメントを投稿