2015/08/22

【現場最前線】作業は1日わずか2時間! 時間と戦う東京駅5・6番線ホーム屋根改修工事

東日本旅客鉄道(JR東日本)東京支社が進める、東京駅5・6番線ホームの屋根改修工事がほぼ完成した。施工を担当する東鉄工業は、オール夜間工事で1日に確保できる作業時間がわずか2時間余りという厳しい条件下で高い技術力とノウハウを発揮し、安全で高精度な施工を実現した。改修に当たっては、1914年の駅開業時から約100年間、屋根を支え続けた鋳鉄製の柱を撤去・移設し、モニュメントとして保存している。

 ホームの屋根改修は、「東京駅第二乗降場上家改修その2(屋根・躯体その他)工事」として実施。山手線と京浜東北線が発着する5・6番線ホームの既存屋根1290㎡を解体し、約1400㎡の新設屋根を設置する。
 工事概要は、仮囲い設置、既存ホーム掘削、基礎新設、鉄骨新設、屋根新設、既存屋根解体。改修に当たっては、既存柱36本を新設柱24本に置き換える。
 工事は、終電後のオール夜間作業で進めるため、1日に確保できる作業時間はわずか2時間余りしかない。終電後の午前1時過ぎに作業を開始するが、午前4時には利用者が駅に入ってくる。
 東鉄工業東京建築支店工事部東京駅工事所上席主任の水柿貴司氏は、「列車の運行状況によっては、十分な作業時間が確保できないケースもあり、資機材の搬入に当たっても、ものすごい労力がいる」と説明する。
 東京駅やその周辺では、さまざまな鉄道工事が並行して進んでいるため、工事用作業車の入場だけでも一苦労する。多くの作業車をスムーズに現場に到着させるため、各社は工事の進捗に合わせて綿密な打ち合わせを定期的に実施するが、入場ゲートには約20台の入場待ち作業車が列をなすこともある。
 東鉄工業の現場である5・6番線の線路を使って移動する他社の工事用作業車もあるため、「一番最後に入って、一番最初に出なければならない」(水柿氏)という時間的なハンディキャップを乗り越えながら作業を進めた。

100年前の鋳鉄柱をモニュメントとして保存
既存柱のうち、14本の鋳鉄製柱は駅開業時から約100年間使用され続けてきた。このうち撤去した2本を当時の黄緑色からベージュ色に再塗装して、開業当時の姿を後世に伝えるモニュメントとして5・6番線ホームの有楽町側に移設、保存している。
 万世橋のホーム上屋のレール基礎に続き、貴重な遺産の保存は2回目という、東鉄工業東京駅工事所の柏木幸基統括所長は、「以前の塗料を剥いだら、柱に刻まれた刻印がきれいに浮き出てきた」と歴史の重さを実感したという。
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