2012/02/13

被災地の高台移転で埋蔵文化財の扱いが課題に!文化庁は発掘調査に全力

 歴史か現実か--。東日本大震災からの復興に向けた宅地移転や基盤整備を前に、埋蔵文化財をどう扱うかという課題が浮上している。被災地に限ったことではないが、貴重な文化財は後世に残していくのが原則。しかし、仮に住宅地の移転候補地で重要な遺跡が見つかった場合には、計画の見直しを迫られ、速やかな復興の足かせにもなりかねない。文化庁は2012年度、今後膨大な開発行為が予定される被災地に人員を集中投入し、埋蔵文化財の緊急発掘調査に乗り出す。

 埋蔵文化財は、発掘調査により、その存在を明らかにすることで、文字に記すことのできない『無言の歴史』を後世に伝える国民の共有財産だ。東北地方には縄文時代の遺跡などが多く眠っているという。
 通常、土地区画整理事業や道路建設などの土木工事を行う際には、周知の「包蔵地」では事前の届出や発掘調査などが必要で、それ以外のエリアでも発見後の現状維持が求められる。
 しかし、復興が急がれる被災地では、これまでどおり時間をかけ、すべてをしっかりチェックすることは難しい。復興まちづくりの進展に伴い、高台移転や区画整理といったボリュームのある開発行為が、各地で一気に同時進行する可能性があり、マンパワーも追いつかなくなるためだ。
 そこで発掘調査区域の優先順位を付け、場合によっては本格的な発掘を免除し記録に努めるなど、柔軟な措置を講じる。
 文化庁はこれまでに、各都道府県・政令市の教育委員会に対し職員派遣を要請。オールジャパン体制で発掘調査に臨む方針だ。
 4月から各地で試掘や確認調査を精力的に展開し、発掘調査の必要性を見極めていく。もし、重要度の高い遺跡が発見された場合は、地元自治体や住民らの理解を求め、極力保存することになりそうだ。
 同庁は12年度予算案に、埋蔵文化財緊急発掘調査費(東日本大震災復興交付金)として18億円を計上。このほか、全国で700件超の被害が報告されている建造物や記念物などの文化財復旧費に、約19億円を設定している。

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