建築意匠系のBIMソフト『ArchiCAD』を提供するCADベンダーのグラフィソフト(本社・ハンガリー)に、多くのユーザーから「図面データを外に持ち歩きたい」という要望が殺到している。 加えて世間にスマートモバイルが普及、新システム『BIMx』を開発し、昨年9月に米アップル社iPad、iPhone専用アプリケーションとして提供を始めた。グラフィソフトジャパン(東京都港区)の飯田貴プロダクトマーケティングマネージャーは「BIMxはVBの進化版と受け止めてもらいたい。より手軽にBIMの体験が可能になった」と説明する。
前身となったのはプレゼンテーションソフト『バーチャルビルディングエクスプローラー(VB)』で、世に出たのは3年前だ。3次元データをウォークスルーデータとして出力し、仮想の建築を自由に体感できるようにした。空間検証や施主との合意形成ニーズもあり、ArchiCADユーザーを支援するVIPサービスのメニューとして運用してきた。
最新ArchiCADからは、3次元図面データをBIMx用に出力し、その変換データをパソコン経由で取り込めるようにした。スマートモバイルを使えばいつでもどこでも、3次元モデルを自在に操り、その中を自由に動き回ることができる。「他のウォークスルーソフトと違うのは重力要素があり、より現実に近い感覚で移動できる点だ」(飯田氏)
そもそも同社がVBを商品化した狙いには、意匠設計、構造設計、設備設計という各担当者の意識を共有する手段として活用してもらいたい思いがあった。平野雅之マーケティングマネージャーは「分業文化の日本では関係者間の意思疎通が強く求められ、その支援ツールとしてVBの考え方が固まった。実はArchiCADの中で、VBは日本発として生まれたメニューの一つ」と明かす。
VBの開発当初は、主にプロジェクト関係者との連携を想定していたが、実際には施主に設計意図を伝えるコミュニケーションツールとしての使い方も多くあり、そのツールとしてスマートモバイルの活用が現実となった。「プレゼンテーションでは設計者の説明を聞く必要もあり、施主はその場でゆっくりと提案を考察できない。提案を持ち歩き、忙しくない時間に検討できる手軽さと自由度の高さがBIMxの良さかもしれない」(平野氏)
BIMが急速に普及する中、ダウンロード数は全世界で2万2000件に達した。日本はまだ1000件を超えたばかり。同社は「施工者にイメージを伝えるツールとして利用している設計者もあり、いずれは相互にやり取りできる現場のコミュニケーションツールとして使ってもらいたい」(飯田氏)と期待している。
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