青木茂建築工房(青木茂主宰)が設計した満珠荘大規模改修工事リファイニングプロジェクトが完成した。眺望を最大限に生かしながら耐震補強するという命題を克服した青木氏は、「検査済証も交付され、法的にも新築と同等の評価を得ている。古い建物がよみがえることを認識していただければ幸いです」と語った。2月25日にオープンする。
下関市が老人休養ホームとして34年間活用してきた満珠荘を、宿泊施設としてリニューアルするプロジェクト。「見た瞬間にイメージした」(青木氏)と、関門海峡を見晴らす絶好の眺望を最大限生かすことが計画の主眼となった。
耐震補強は、既存の擁壁を一部解体し、改修後のプランに合わせてRC耐震壁を設けて強度を高める計画とした。眺望を確保するため、南側の補強は地下1階部分だけとし、1、2階は南側以外の構面に耐震壁・袖壁を設けて耐力を向上させた。用途は地下1階が宿泊室、1階が浴場、最上階が大空間のラウンジ・食堂。立体的にもバランスの取れた構造となっており、改修前に比べIs値(構造耐震指標)は大幅に向上した。
南面をガラス張りとしたため、鉄骨グレーチングによる庇を設け、夏の日差しを防ぐことで室内の熱負荷を低減させる。建物北側の1スパンを吹き抜けの階段とし、その屋上にトップライトと換気窓を設けた。自然採光と自然換気を取り入れることで、建物全体の環境性能を向上させ、ランニングコストの低減を図る。
このほか、メンテナンス性、長寿命化、ユニバーサルデザインにも配慮し、老人から子どもまで多世代が活用できる市民交流の場とした。新築に比べ、工事費を2割程度削減したほか、80%以上のCO2が削減され、「これ以上の省エネ技術はない」(青木氏)とリファイニング工法の特性を示した。
規模は、RC・S造地下1階地上2階建て延べ1831㎡。施工は長野工務店・永山建設JV(建築)、山陽電工(電気)、空調サービス(空調)、新ホーム・日環特殊JV(給排水)。所在地は下関市みもすそ川町3-75。
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