2012/02/25

iPadとデジカメで現場検査 大林組がモバイルの新活用策

現場で図面を持ち歩かずにすむ
 大林組が設備や配筋の施工検査ツールにスマートモバイルの活用を始めたのは2011年8月からだ。米アップル社のiPadとデジタルカメラを連携させた『現場検査支援システム』を開発し、これまでに両検査とも10件を超える現場に導入した。建築本部本部長室設備企画課の本吉健志課長は「全店の現場を対象に導入を呼び掛けているが、社内の反応は思った以上に良く、問い合わせも数多く寄せられている」と明かす。

◇作業所のデスクワーク軽減

 そもそも現場の品質管理は、社内の決められた検査項目に沿って施工状況をチェックしている。項目は工種や部位ごとに細分化され、現場作業員は出力したA4サイズの検査用紙(品質管理記録書)を持って整合確認を行い、その結果を現場事務所に戻ってパソコンで入力している。不具合などの指摘個所があった場合には写真を撮影し、報告書類に添付する必要があり、現場では夕方以降のデスクワークが常態化している。
 導入した現場検査支援システムは、社内の品質管理記録書に基づいた検査ができる上、手間だった指摘場所の写真貼付についても自動で行われる。無線LAN内蔵SDカード「EYE-Fi(アイファイ)」を活用し、検査と撮影した場所のデータ整合も実現させた。「厳密に時間的な効果を検証した訳ではないものの、導入した現場ではデスクワークの作業負担が、かなり低減されている」(吉村孝彦主任)という。
 同社は3月末までに計15現場に導入を増やす予定だ。1現場当たり1-2台のスマートモバイルを活用。協力会社と連携して使う現場もある。「特に小規模現場はマンパワーが限られていることもあり、業務負担を軽減できるツールとして有効に機能している」(同)。全店を対象に位置付けることから、導入現場は今後一気に広がる見通しだ。

◇モバイルで図面持ち歩かず

 実は、同社は6年前から携帯端末を現場検査の支援ツールとして導入していた。商品の生産が終了したこともあり、スマートモバイル対応に切り替えた。従来システムは有線LANでパソコンに検査情報を取り込み、その際に撮影した写真類の整理にも時間がかかっていた。本吉氏は「旧システムは改善すべき部分が多かったが、その経験があったからこそ、新システムでは大幅に使い勝手を向上できた」と手応えを口にする。
 スマートモバイルの現場活用は、社内の研究開発テーマにも位置付けている。データ管理の無償アプリケーションは多種多様に存在することから、現場事務所ごとに管理用ソフトを選択し、自由に現場で活用してもらう試行プロジェクトとして導入を始めている。試験的に数10台を用意し、その効果を検証中だ。同社は「現場内で図面を持ち歩くことを想定した場合、多くの図面情報を保管できる点で、急な図面確認にもその場で対応しやすいスマートモバイルは、現場ツールとして適している」(本吉氏)と考えている。

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