協力会社との情報共有にクラウドサービス「作業所Net」を有効利用している大成建設。登録業者は約5500社、データ共有数は図面にして月50万枚に達する。蓄積した貴重な図面データを現場の業務にも生かしたいと、スマートモバイルの活用に糸口を見いだす。
同社は3月にも、米アップル社iPhone、iPadの専用アプリケーション『Field Pad』の提供を始める。同社がスマートフォン用アプリケーションを販売するのは初の試み。価格は1500円に設定、初年度は500ダウンロードを目指している。
Field Padは、図面データにモバイルからコメント、写真、音声、画像を自由に記録できる。情報が更新された場合には、指定したパソコンに自動送信する帳票出力機能も盛り込んだ。
「まずは野帳のメモ代わりに活用してほしい。使い込めば、利用価値が予想以上に幅広いことが分かるはず」とは松井達彦技術部長。現場の工事係などは1日の作業を終えても事務所に戻ってから写真整理などのデスクワークが日課になっている。
パソコンに撮影データが自動配信されるため、その作業は大幅に省力化される。安全面の指示も図面と写真をセットにすれば、より具体的に示せる。
ただ、セキュリティーの問題もあり、活用の仕方によっては組織として情報共有の仕組みを再構築する必要も出てくる。
同社は1998年に電子調達、03年に作業所Netをスタートするなど、現場業務のIT化を積極的に推進してきた。成瀬亨社長室情報企画部企画室長は「振り返れば今回が現場改革の3つ目の動きになるだろう。ITによる業務改革の中で、最前線の生産現場はまだ改善の余地が残されている。スマートモバイルを有効活用できれば、大きな効果が期待できる」と強調する。
09年5月から取り組む品質管理目標「TAISEI QUALITY活動」では、業務改善につながる重要な生産ツールの一つとしてスマートモバイルを位置付けた。「クラウドサービス(作業所Net)と一体化したシステムを組んでいる点でも、あらゆる場面に応用できる下地が強みになる」(松井部長)。
サーバーに蓄積している図面は、2次元データに限定している。近年の建築プロジェクトではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)手法を導入するケースが増えているだけに、将来的には「部分的でも3次元対応を可能にしたい」(田辺課長)と考えている。同社のスマートモバイル活用の技術開発は、これから本番を迎えようとしている。
AmazonLink: 大成建設の研究プロジェクトチームが書いた『超高層ビルの“なぜ”を科学する―だれもが抱く素朴な疑問にズバリ答える!』