2012/02/01

BIMとコンピューティショナルデザインを融合 日建設計デジタルデザイン室長の山梨知彦さん

 日建設計は、社内横断組織となるデジタルデザイン室を立ち上げた。「BIMだけでなく、コンピューティショナルデザイン、シミュレーションを一体で考える」と同室長に就いた山梨知彦執行役員設計担当プリンシパルは話す。インタビューの全容を掲載する。

◇今年中に3割の意匠図をBIM化

 同社は2011年にデジタルデザイン室の前身となる組織を立ち上げて1年間、社内への普及に努めてきた。「意匠図で全体の5%をBIMにできた。これまでは概念的に役立つのだろうと思われていたものが、5%まで高まったことで実際に使えるという雰囲気に変わった」という。
 2012年は意匠図のBIM化を一気に30%まで高めるとともに、意匠・構造・設備が一体となった「FULLBIM」も5%まで増やす。「いままでは実験だったが、ことしは一般化、実践化の段階に入る」
 もともと、BIMは生産者、施工者の生産効率向上に主眼が置かれていた。「設計者にとってBIMは、効率化に加えて高品質、高性能の設計を実現するために使えるものと考え、取り組んできた」。次の段階として、設計者や施工者のメリットをクライアントに還元する必要性を感じ始めている。「そうすれば、ファシリティーマネジメントなどが格段に高品質なビジネスになり得る。クライアントの声を聞きながらともにつくり、クライアントに価値を返す時代になってきた」と、一般化の先にある目的を説明する。

◇苦しかった社内改革

 社内のBIM啓発は、当初は苦しいと感じた時期もあったが、1人がその良さを実感すると周りの人たちも使い始めた。「伝染病のように広がった。30%は高いハードルだが、少し後押しすれば実現できる。心配はしていない」と自信をみせる。
 また「中にはクリエーティブなへそ曲がりもいる。その芽を摘んでしまわず、われわれが考えるBIMとは違った使い方、考え方を大事にしていきたい」と、画一化するのではなくBIMが持っている可能性を広げていきたい考えだ。
 当初は木材会館(東京都江東区)やホキ美術館(千葉市)などの一見すると特殊に見える建築にBIMを採用してきたが「BIMは一般の建築に使えることが分かった。特殊な建築はむしろ、手描きやコンピューテーショナルデザインが使われるような時代になる」とみている。
 コンピューテーショナルデザインは「これまでは建築というよりオブジェのレベルだったが、本格的に仕事で使える段階にきている。人間の力だけではできなかったカタチができれば、より高度で新しい建築が生まれる」とコンピューターの力に期待する。
 シミュレーションについても「BIMの情報の使い方が分かってきた。ことしからもっと設計者に普及させる」と、いずれも実践化へと進める考えだ。
 「コンピューテーショナルデザイン、シミュレーションを支えるプラットフォームがBIM。この3つを一体として考えていきたい」