2012/04/04

国交省がBIMの利点と課題を検証 試行導入した新宿労働総合庁舎で

新宿労働総合庁舎の完成パース
 国土交通省官房官庁営繕部は、BIMを試行導入した新宿労働総合庁舎の設計についてメリットなどを分析した。斜線制限の可視化などで地下1層分の工事を節約したり、手戻りの減少などを確認できたという。一方で、発注者側の意志決定のスピードアップや、データ条件の取り決めを強化する必要性などが課題として浮き彫りになった。国では、官庁施設整備にBIMを導入する事例が増えており、今回の結果を踏まえて、さらなる業務の効率化を目指す。

 今回BIMを試行導入した新宿労働総合庁舎の規模はRC造地下1階地上6階建て延べ約3450㎡。業務期間は10年10月から12年3月までで、設計は梓設計が担当した。
 基本設計に前倒しできた主な業務を見ると、自然採光の効果を屋内照度シミュレーションで事前検証でき、効果の低いライトシェルフ設置をやめた。自然換気でも、換気性能上げる開口部を追加した。建設コスト管理では概算数量を容易に計算できたという。
 このほか、斜線制限や敷地条件を可視化して地下2階地上5階建てのプランを、地下1階地上6階建てに変更できた。このことで地下1層分の土工事がいらなくなった。また関係者間の情報共有や相互理解を得られたことや修正作業の手戻りも減少した。
 今後、着手前の設計与条件の整理や、提案に対する発注者の意志決定を迅速化して効果をさらに上げたいという。部材や設備の形状、属性などのデータについて、設計段階でどこまで詳細に入力するかということが課題として明らかになった。データ入力条件を関係者間で決めておく必要も感じたという。
 今後は施工を通じた検証を進めるとともに、現在、設計業務で試行している前橋地方合同庁舎(仮称)、静岡地方法務局藤枝出張所などにも検証結果を生かしていく。


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