2012/04/21

建築家山嵜一也の『書を読み海を渡れ』 違う言葉を話す時に考えていること

記録としての議事録、メールなどは後で読み返せるものの、
その分、膨大な書類を作成しなければならない
『俳句への道』 高浜虚子 著

 建築の仕事を選んでいなければ、海外に出られなかったかも知れない。職場での図面、模型、CGなどは職業上の“共通言語”となり、言葉の問題があった時は何度も助けられていた。しかし、目の前で鉄、ガラス、コンクリートが建ち上がる施工現場でのやり取りは、瞬発力、言い回し、アイコンタクト、タイミングなどが必要となる。そのような人間の総合力が求められる言語能力は、嫌な思いや悔しい思いをしながら使うことでしか身につかなかった。

 日本語のない環境で仕事をし始めて“言葉を扱うこと”を意識するようになった。ここでは自分の考えを的確に述べられないと理解していないと思われることがある。親切に汲み取ってくれない。電話口で相手の番号を咄嗟に書き留められない。右と言い、左手を上げている。考えていることと行動がチグハグな時期があった。
 日本語はあいまいな言語と言われる。阿吽(あうん)の呼吸ですべてを語る必要のない言語。余韻、余白を含んだ言葉。日々の英語との対比を通して「結局、日本語というのは日本人という民族のために有効な言語である」という当たり前の答えにたどり着いた。しかし、それゆえ日本語には奥行きがあり、字数や季語などの制約の中で楽しむ俳句という芸術が生まれたのだと思う。
 一方で英語は非常にシンプルかつ機能的な言語だと思う。それでも渡英当初は日本語を扱う感覚で使ってしまい、そこに語彙(ごい)力の少なさも手伝ってなかなか意図が伝わらなかった。他言語を使うときには、母国語を扱う時とは違う感覚や姿勢で臨まなければならない。
 日本で母国語である日本語で生活しているときには、日常の言葉を無意識に使っていたように思う。しかし、英語を使って生活するようになって、英語だけでなく日本語を含めた言葉を意識するようになった。そして、それは言葉だけに留まらず、ものごとをもう一つの面から見るようになった考え方にまで影響を及ぼしていると思われる。
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『俳句への道 (岩波文庫)』 AmazonLink

【The ideas of speaking different languages】
  If I didn t choose an architect as myoccupation, I might not go out from Japan. In the workplace, we use drawings, physical models and CGs as our architectural common languages which helped me a lot when I had a trouble with my English skill in earlier days in the U.K. When communicating with contractors and engineers on site, it requires a total language skill such as instantaneousness, expression, eye-contact and timing. However, I couldn t learn those skills without frustration at work and on my daily life.
  Since working in non-Japanese environment, I have emphasized to uselanguages more than before. I couldn t write down the numbers on the phones and raised my left hand with saying "Right". There were many discrepancies between my ideas and actions.
  Japanese is called an ambiguous language. We don t need to expressesand understand everything under rhythmic, "A and UN" breathing. The words include rhyme and blank. Eventually, I arrived at a single common fact that the Japanese language is only for the single race, Japanese. Therefore, this language has depth and can create the art of Haiku which has a limit number of letters and restriction of seasonal words.
  On the other hand, in my opinion, English is the simple and functional language. However, it wasn t clear enough if I used it same way as Japanese when I started living in the U.K. I believe that we have to use the different languages with other sense and attitude from our mother tongue.
  When my language was only Japanese before coming to the U.K., I didn t pay much attention of my daily words. Since, however, I started living with English in the U.K., I have been aware of using languages including even Japanese. Moreover, it has an influence on not only the languages but also my creative ideas.

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