2012/04/17

左官職人の一大イベント 「大江戸左官まつり」が開かれる

 日本左官会議、東京都左官職組合連合会の青年部である平成会、左官を考える会による「大江戸 左官祭り-左官職人、江戸に大集合」が13日から15日までの3日間、東京都中央区で開かれた。全国の左官職人が技術と知恵の数々を公開する初の取り組みで、14日には、松隈章氏(竹中工務店)の司会で日本を代表する左官職人の久住章氏、原田進氏、挟土秀平氏が参加し、「これからの日本の左官」をテーマに座談会を開いた=写真。

 前半は、左官の仕事を紹介。久住氏は歴史の観点から、町家の建築に左官工事が大量に適用され黄金時代を迎えた江戸時代や、工業製品が台頭し漆喰工事などの需要が減少した20世紀中ごろ以降について述べた。原田氏は、写真をもとに、左官材料「銀杏草」などに触れ、海草を煮ることで漆喰やのり土に入れる糊をつくる過程を話した。
 これを踏まえた左官の中にある日本らしさについて挟土氏は「土、砂のような身近にある素材を大きくしたり小さくしたり、藁(わら)を入れてみたりと数限りない表情を生んできた繊細さ・豊かさは、世界中の人が日本のイメージとして抱く茶道など、禅的なものに通じる」との見方を示した。
 後半は、「これからの日本の左官」について議論。日ごろから講習会を通して技術・情報の公開に尽力している久住氏は、「講習会の参加者が考え出した新しい技術をもとに、若い世代にまた違う角度で教えることができる。これが技術を成長させるおもしろい方法。教えることが自分に返ってくる」と自身の経験をもとに、左官を社会に“つなぎ育てる”意義を説いた。
 最後に、久住氏は「求められるものをただつくるのではなく、左官側からデザイン提案などを行い、可能性を広げることが大切。顧客の夢が大きくなるにつれて、職人の夢も大きくなる。人を“幸せ”にするために、自ら仕事をつくってほしい」と左官の革新を訴えるとともに、限られた地球資源の中で幅広い技術を提供できる左官の可能性に触れ「絵空事ではなく、世界を救うのは日本の左官と思ってほしい」と願いを込めた。
 このほか、かまどづくり実演や、左官職人が実際に壁を塗る光景を、実況解説付きで見学する講習会も行われた。多くの人が訪れ、会場は立ち見が出るほどの盛況だった。

『土壁・左官の仕事と技術』 AmazonLink

Related Posts:

  • スマートフォンで玉掛け多吊り計算ができる! 「D.C.吊る~ん」が無料公開 アンドロイド版アプリで 玉掛け計算できる シャックルやフックなど建設現場用の吊り具製造メーカー、大洋製器工業(大阪市)が、スマートフォンで利用できる玉掛け専用の多点吊り計算アプリケーションを始めた。これまでに500件ものダウンロードがあったという。 アプリは、ワイヤロープスリングやチェーンスリングなどを使った多点吊りを行う際、吊り具の選定に必要な情報を入力するだけで、作業上の面倒な計算結果がその場で確認できる。算出数値は吊り具1本当たりの使… Read More
  • 高校生が鉄筋組立に挑戦 関西鉄筋出前講座でプロの技術学ぶ  関西鉄筋工業協同組合(岩田正吾理事長)は13日、京都府南丹市の府立農芸高校で「出前講座」を開いた。環境緑地科農業土木系統3年生11人と2年生2人、農産バイオ科の3年生1人の計14人が、講師から指導を受け、鉄筋の組み立て作業に挑戦した=写真。  この日は国土交通省の土地・建設産業局の榎本健太郎建設市場整備課長、同課労働資材対策室の東谷研二労働係長、建設業振興基金の竹内勉構造改善センター海外研修協力室長も見学に訪れ、真剣な表情で取り組む生徒を見… Read More
  • コードレスで鉄筋切断! マックスが結束機の電池使えるカッター発売 現場での使用感が格段に向上する 鉄筋工から要望が挙がっていた電源コードレスの充電式鉄筋カッタ「PJ-RC161-BC」を、マックスが商品化した。同社主力商品の鉄筋結束機の電池パックを共有できるようにし、鉄筋工が作業に応じて機器を使い分けしやすくした。充電式鉄筋カッタは他社も販売しているが、切断パワーや使用時間の問題もあり、電源コードタイプが主流になっていた。同社のユーザー調査によると、電源を確保しにくい場合や作業の邪魔になるなどコードレスへ… Read More
  • みんな鉄筋でつくりました! 静岡県鉄筋業協組がオブジェ制作 静岡県鉄筋業協同組合(石原光理事長)は、9月15-17日に静岡市のツインメッセで行われた「静岡県住まい博2012」に出展した。「もっと知って!鉄筋工事のこと」をテーマに、鉄筋工事に対する一般の人たちの認知度の向上を図るのが狙い。  今回は6ブースを使って、新東名高速道路での鉄筋施工のミニチュアモデルで再現、橋台や橋脚、床版をつくり、展示したほか、蛇や龍、バイオリン、自転車などのオブジェも製作した、  また、鉄筋結束コーナーや重さ当てゲーム、ル… Read More
  • 「建設業の経営厳しい」が8割占める 埼玉建協のアンケート 建設業の経営は厳しい局面が続く(写真はイメージ) 埼玉県建設業協会(真下恵司会長)は、2012年度建設業等に関するアンケートの結果をまとめた。経営状況の設問では、「横ばい」「少し悪い」「悪い」で合計80%を占めるなど、依然として会員企業が厳しい経営環境に置かれている状況が浮き彫りとなっている。今回のアンケート結果は、埼玉県など主要発注機関に報告する。 アンケートは、11年度の工事実績などについて、6月22日-7月6日の期間で全会員425社を… Read More

0 コメント :

コメントを投稿