日本左官会議、東京都左官職組合連合会の青年部である平成会、左官を考える会による「大江戸 左官祭り-左官職人、江戸に大集合」が13日から15日までの3日間、東京都中央区で開かれた。全国の左官職人が技術と知恵の数々を公開する初の取り組みで、14日には、松隈章氏(竹中工務店)の司会で日本を代表する左官職人の久住章氏、原田進氏、挟土秀平氏が参加し、「これからの日本の左官」をテーマに座談会を開いた=写真。
前半は、左官の仕事を紹介。久住氏は歴史の観点から、町家の建築に左官工事が大量に適用され黄金時代を迎えた江戸時代や、工業製品が台頭し漆喰工事などの需要が減少した20世紀中ごろ以降について述べた。原田氏は、写真をもとに、左官材料「銀杏草」などに触れ、海草を煮ることで漆喰やのり土に入れる糊をつくる過程を話した。
これを踏まえた左官の中にある日本らしさについて挟土氏は「土、砂のような身近にある素材を大きくしたり小さくしたり、藁(わら)を入れてみたりと数限りない表情を生んできた繊細さ・豊かさは、世界中の人が日本のイメージとして抱く茶道など、禅的なものに通じる」との見方を示した。
後半は、「これからの日本の左官」について議論。日ごろから講習会を通して技術・情報の公開に尽力している久住氏は、「講習会の参加者が考え出した新しい技術をもとに、若い世代にまた違う角度で教えることができる。これが技術を成長させるおもしろい方法。教えることが自分に返ってくる」と自身の経験をもとに、左官を社会に“つなぎ育てる”意義を説いた。
最後に、久住氏は「求められるものをただつくるのではなく、左官側からデザイン提案などを行い、可能性を広げることが大切。顧客の夢が大きくなるにつれて、職人の夢も大きくなる。人を“幸せ”にするために、自ら仕事をつくってほしい」と左官の革新を訴えるとともに、限られた地球資源の中で幅広い技術を提供できる左官の可能性に触れ「絵空事ではなく、世界を救うのは日本の左官と思ってほしい」と願いを込めた。
このほか、かまどづくり実演や、左官職人が実際に壁を塗る光景を、実況解説付きで見学する講習会も行われた。多くの人が訪れ、会場は立ち見が出るほどの盛況だった。
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