2012/04/16

復興庁の特区認定進む 石巻、仙台東部地区など11件に

石巻市の特区位置図
 復興庁発足から間もなく2カ月。東日本大震災の被災自治体から復興推進計画(復興特区)の申請が相次いでいる。4月13日現在、宮城県内6件、岩手2件、青森と福島、茨城各1件の計11件が認定されている。税制上や利子補給の特別措置に関する申請が多くを占めるが、石巻市(2件)と塩竃市、仙台市(いずれも宮城県)の単独提出案件では、企業立地奨励金や助成、融資など特区の利点を活用する産業集積構想を示している。

◇石巻は「ICT防災センター」

 石巻市の「石巻まちなか再生特区」は、被災した市立病院のJR石巻駅前移転をきっかけに、コンパクトで安全かつ安心な中心市街地づくりを行うというもの。対象区域は、市役所があるJR石巻駅前から旧北上川周辺に至る約56・4haで、病院立地にあわせた医歯薬・福祉産業、老人ホームやグループホームなどの基盤整備による介護産業の集積に加えて、市街地再開発や災害公営住宅による定住促進、これらと一体的な各種商業施設の誘致を図る。
 観光業の再興策では、年間20万人以上が訪れていた石ノ森萬画館の復旧や、旧北上川周辺に散策路や休憩所を整備する「水と緑のプロムナード事業」を国の旧北上川堤防整備と連携して進める。
 創造的復興事業では、太陽光発電など新エネルギーの情報を一元的に管理し、公共施設への再生可能エネルギー導入を進める拠点となる『(仮称)ICT防災センター』を新設する。
 さらに官民連携の復興プロジェクトでは、日本IBMなどが参画する官民連携の石巻復興協働プロジェクト協議会(会長・亀山紘市長)が主体となり、エコ・セーフティハウスや石巻高度ICT(情報通信技術)基盤整備、EV(電気自動車)バス交通・充電ステーション整備などによる世界最先端のエコタウンを目指す。
 北上川流域の北上、河北両地区を対象とする「北上食料供給体制特区」は、市が北上地区橋浦にライスセンター(共同乾燥調整貯蔵施設)を整備する。同地区では、津波により約300haの農地が冠水。これを14年度までに復旧させ、営農を再開させるとともに、農地の大区画化を進める予定だ。

◇仙台市は「農と食のフロンティア」

仙台市の申請地区
 仙台市は、津波を受けた東部地区の農業振興地域内を「農と食のフロンティア」に位置付け、関連産業の集積区域に設定した。農地の大区画化や営農組織の法人化、6次産業化などを促進し、成長産業としての農業振興と雇用の拡大に結びつける。
 現地では、地元農業法人を中心に首都圏の大手企業などが参画する仙台東部地域6次産業研究会が設立されており、最先端技術を用いた栽培や加工、流通・販売を垂直統合する事業の具体化に向けて最終調整段階にある。
 また、藻を培養する際の炭化水素をエネルギーとして抽出する実証プラントや、太陽光発電・廃熱を利用する植物工場などを始動する可能性も高まっている。
 塩竃市は、水産加工業出荷額520億円以上への復元と、松島遊覧船乗降客人員を46万人以上とする「千賀(ちが)の浦観光推進特区」を申請した。区域は海岸通や本町、港町の36・6haで、水産業と加工業を支える冷凍冷蔵施設や製氷貯氷施設、加工施設整備事業者や水族館整備事業者への資金貸付などを行う。
 目玉事業となる水族館は、塩釜ガスなど民間企業4社でつくる塩釜水族館建設推進協議会が建設を計画。規模は5階建て延べ1万5000㎡とし、2年後の開館を目指している。

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