2012/04/23

村野藤吾の思想尊重した設計を公表 米子市の市民公会堂改修、基本設計は日建JV

基本設計の外観
 鳥取県米子市は、公会堂耐震補強・大規模改修の基本設計を公表した。既存施設を手掛けた「村野藤吾氏の設計思想、公会堂創建の背景を尊重し、次代の『市民の公会堂』として相応しい意匠性、機能性、安全性を備えた公会堂とする」ことを念頭に、さまざまな問題点に対して、現地調査、管理者ヒアリングを踏まえた解決策を示している。基本設計は、日建設計・桑本総合設計JVが担当した。

 耐震補強と大規模改修の基本方針は、▽改修計画を見据えた合理的な再調査とより精度の高い耐震性能評価▽市民に親しまれる公会堂のデザインに配慮した耐震改修▽必要最小限の改修を行って現施設をできるだけ長く使用▽にぎわいを生み出す市民活動の拠点▽市民に長く愛される使いやすい公会堂▽省エネルギーで簡易な操作の設備導入--を掲げている。
 基本方針をベースにさまざまな問題点に対する具体的な解決策(整備が必要と思われる項目)を示している。建物の安全性低下については、改修図面と耐震診断検証、改修計画を見据えた追加調査を実施し、公会堂・楽屋棟の機能を損なわない耐震補強、耐震補強後の耐震性能を検討する。意匠の継承と機能保全については、外壁クラック補修と防水塗装、外壁タイル保存・一部撤去・張り替え、バルコニー防水撤去・更新、地下外壁漏水個所の修繕などで対応する。
 設備の劣化・老朽化については、管理者へのヒアリングに基づく検討、省エネで簡易な操作の機器・配管を検討し、エレベーター、受変電設備、非常放送設備、自火報感知機を更新するとともに、舞台設備全体について運用者へのヒアリング、音響測定結果に基づく検討、ホール天井内の各設備機器の検討を実施する。
 市民活動の促進と中心市街地活性化に対応した内装改修計画は、ホワイエでの発表・展示活動、リハーサル室の利便性向上、集会室の利用促進、バリアフリー化を検討、外構改修計画は、外周柵のバリア、外周門扉の撤去、喫茶部分のデッキスペース新設を計画している。
 既存施設の規模は、公会堂ホール棟RC・S造地下1階地上5階建て延べ3690㎡、楽屋棟RC・S造地下1階地上3階建て延べ503㎡、管理棟RC造2階建て延べ579㎡。現在、実施設計の公募型指名競争入札を公告し、手続きを進めており、5月7日に入札する。履行期間は10月31日まで。工事は12月議会案件での発注を目指している。

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