2012/08/25

竣工へラストスパート! 仙台の復興シンボル「ゼビオアリーナ」

高所作業車が林立する現場
三菱UFJリース、ゼビオが建設する、民間企業としては全国で初めての大規模多目的アリーナ『ゼビオアリーナ』は、震災からの復興に向かう仙台市民の希望がつまった注目のプロジェクトだ。三菱UFJリースと佐藤工業が共同で、仙台市太白区のあすと長町地内に計画し整備中の『あすと長町スポーツタウン』の中核施設となる。
 規模はRC一部S造地下1階地上3階建て延べ1万1707㎡。最大6000人を収容。プロバスケットボールやアイスホッケーの試合会場となるほか、コンサートやイベント、コンベンションにも対応する。
 佐藤工業・仙建工業JVの施工で2011年7月に着工し、地盤改良から着手。同年末には基礎と地下1階の躯体、1階土間工事まで完了した。ことし4月末には3階までの躯体コンクリート打設が終了。並行して鉄骨トラスの製作などを進め、6月中旬から鉄骨トラスの組み立てに着手。7月上旬には組み上がり、現在は屋根工事と内部の仕上げ工事を進めている。

◇職人の手配が困難

屋根工事はチームワークが必要だ
被災地では復旧・復興工事が大量に発注され、職人の確保が極めて難しい状況にあるが、若林勉所長(佐藤工業)は「一時に多くの熟練工を確保するのは困難」と予測。各工事とも少人数の専門職作業員を早目に投入しながら着実に出来高を伸ばしてきた。
 さらに、生コンなどの資材不足が深刻化する中、工期内に完成させるため、「情報を早めにつかみ、手配りや他の工程組み替えなどでやり繰りするしかない」と、アリーナ内部の土間工事ではコンクリート打設の作業を細かく分割するなど工夫を積み重ねている。
 大空間での作業とあって、安全管理にも注力。ダクトやキャットウオークが組み込まれる鉄骨のトラスは地組みの段階で付帯設備も据え付け、高所作業を極力減らすことで墜落災害の危険要因を事前に摘み取っている。さらに「多くの人が使用する建物なので、隅々まで品質を確保しなければならない」と、細部すべてに目を配る。
 若林所長は「すれ違う作業員全員に声を掛けている」という。「それがコミュニケーションの第一歩。基本に立ち返り謙虚に取り組みたい」。誠実で真摯(しんし)な人柄が現場の一体感を醸成。着工以来、無事故・無災害を継続する原動力にもなっている。
 仕上げ工事は8月末で完了、9月下旬の建物の引き渡しに向け、工事はラストスパートに入った。猛暑も続いているだけに「ここで気を緩めず、最後まで無事故・無災害を続けたい」と気を引き締めている。

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