2012/08/22

TOTO「ウォシュレット」の驚くべき変遷 和の精神で“おもてなし"

「ウォシュレットG」
TOTOが北九州市の歴史資料館に収蔵している初代の温水洗浄便座「ウォシュレットG」が、日本機械学会の機械遺産に認定された。家庭で使われる機械では初めて。1980年6月の初代誕生以来、これまでにウォシュレットの出荷台数は世界規模で累計3,000万台を超えた。その進化は、TOTOの技術開発の歴史でもある。
 「時代は変わっても、あえて過去を継承しながら、技術開発を進めてきた」と話すのは、TOTOウォシュレットテクノ(北九州市)の林良祐社長。ウォシュレットの開発には20年近く携わってきた。現在はTOTO執行役員としてウォシュレット生産本部の本部長も務める。
 林氏には「生活文化を追究し続けている商品」という強い思いがある。そもそも日本には、おしりを洗浄する習慣はなかったものの、海外では痔疾治療用として洗浄便座があった。将来必ず一般家庭に普及すると判断したTOTOが開発に着手したのは1978年。その2年後に発売されたのが「ウォシュレットG」だった。
 初代の開発には女性社員や社外モニターの総勢3000人が協力し、ノズル先端からの最適な吐水角度を割り出した。当時の設計仕様はいまもなお受け継がれている。袖部分に貯水タンクを配置したGシリーズはノズルから十分な水量を供給できる高級クラスの位置付けで、TOTOの基幹商品として君臨してきた。

◇1999年の世代交代


ワンダーウェーブ洗浄
「1999年に世代交代が起きた」と林氏は振り返る。Gが誇る豊富な水量は袖に付けた容量1200mmリットルのタンクによって実現していた。80年から並行して発売していたSシリーズは袖なしのコンパクトデザインを重視してきたが、タンク容量が400mmリットルしか確保できないため、Gに比べて洗浄感が見劣りしていた。
 400mmリットルでG並みの洗浄感を確保できる商品として市場投入したのが、「ワンダーウェーブ洗浄」を搭載したアプリコットシリーズだった。ノズル先端から強い吐水と弱い吐水を1秒間に70回繰り返し、洗浄部分の位置でぶつかり水玉状になる仕組み。水量を3分の1に抑え、十分な洗浄感を確保できる画期的な技術と評された。
 林氏は「当時の日本では人気のGシリーズだったが、海外ではデザイン性の面で思うような売り上げにつながらなかった。省エネと省スペースを実現するワンダーウェーブ洗浄の開発は、海外マーケットを意識した戦略もあった」と説明する。実は、試作段階では薄くコンパクトなアプリコットのスタイルを見て、社内の評価は分かれていた。「だが売れ行きは予想を上回り、社内では世代交代を皆が認識せざるを得なかった」と明かす。

◇便器までもきれいに


便器も奇麗にできるはず
TOTOウォシュレットテクノの前身であるパンウォシュレットが設立したのは2001年。ウォシュレット発売当初から電子技術分野の開発と生産分野で協力してきた小糸工業、愛知電機との共同出資で立ち上げた。開発に携わっていた人材を集約することで、「グローバル化を強く意識した」動きでもあった。
 00年に入ると、社内では女性技術者が増加し、これまで以上に「商品開発に女性の視点が反映される」ようになった。06年に搭載された「清潔ノズル」もその一つ。初代Gの時からノズル本体には洗浄機能やコーティングを施すなどの対策を講じてきたが、使用前と使用後にノズルの内側と外側を自動で洗浄する機能を搭載。11年には洗浄時に電解除菌水を使う仕組みに切り替えた。
 「ノズルだけではなく、便器も奇麗にできるはず」と開発したのはことし2月に投入した、ウォシュレットから便器に除菌水を吹きかける新機能だった。現在のTOTOが提案するトイレのコンセプトは“おもてなし"だ。林氏は「次に使う人への気遣いを大切にしている。ウォシュレットの機能には和の精神が息づいている」と強調する。
 Gシリーズは09年に販売が中止となったが、それを支えたウォシュレット機能はいまもなお進化を続けている。

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