2012/08/03

「受賞経験のハードル高い」と冷めた反応 新国立競技場国際コンペ

7月20日に会見した審査委員ら
A 新国立競技場基本構想国際デザイン競技の募集要項が発表されたけど、建築界の反応はどうかな。
B それが意外と冷めている印象が強い。「まだ要項を見ていない」「えっ 国立競技場は国際コンペなの?」という声もあるほどだ。完全なオープンコンペというわけでもないから、参加できない設計者は興味がわかないのは分かるし、「これなら指名コンペにした方がすっきりする」という向きすらある。
C とはいえ、都心の真ん中に8万人収容の、しかも開閉式屋根の次世代型スタジアムを整備しようというのだから誰でも参加できるわけではない。加えて2019年開催のラグビーワールドカップに間に合わせなければならないのだからスケジュールは非常にタイトだと言える。
A 応募資格として受賞経験を求めている国際的な建築賞を見ると、ものすごくハードルが高い。確かにあれでは参加できる建築家はかなり限られそうだけれど。
C 受賞経験は必須ではなく一定規模以上のスタジアムの設計実績があれば参加できる。審査委員長の安藤忠雄さんも会見の中で強調していたけど、意味合いとしては世界中の英知を集めたいというメッセージとともに、これだけのスタジアムを日本は造るのだということを広く世界に発信しようという思いが込められているのかもしれない。
A ちなみに、応募資格を満たす受賞経験がある日本人建築家は?
B 現役ではAIAゴールドメダルが槇文彦、安藤忠雄の両氏。RIBAゴールドメダルは伊東豊雄、磯崎新、安藤の3氏。UIAゴールドメダルは槇、安藤の両氏。プリツカー賞だと妹島和世・西沢立衛(SANAA)、槇、安藤の4氏、世界文化賞が谷口吉生、安藤、槇、伊東の各氏となる。
D 組織事務所は参加に対して温度差がある。これほどのビッグプロジェクトはめったにないのだからと、ものすごく力を入れている事務所がある一方、「準備期間が短い割に提出物はしっかりつくり込まないといけない」という理由で参加しないと決めている事務所もある。今回はアイデアコンペだから、次の段階でのチャンスをうかがう動きもあるようだ。
A どういう顔触れがエントリーするのか注目したいね。

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